学園集

□生憎ですが、私は貴方を存じません。
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生憎ですが、私は貴方を存じません。






校門の前まで来てヴィラルとシモンは同時に気付く。
二人の前には、ポニーテイルの長い朱色の髪を靡(なび)かせる少女が立っていることに。



「あら。シモンにヴィラル、二人ともおはよう」
「ヨーコ、おはよう」
「ああ。随分と早いな」
「仕事があるのよって、ちょっとヴィラル!」


今までものんびりした雰囲気から一変。
突然のヨーコの叫び声に二人は肩をビクつかせる。


「新学期早々なんなのよ、その気怠げな挨拶わ。もっとシャキッとしなさいよ!」
「まあまあ(新学期早々ダメ出しもどうだろ)」
「…オハヨウゴザイマス」
「絞り出した感じだな(棒読みだし)」
「合格!」
「(合格ライン、低!?)」


やいのやいのと話しつつ、三人は揃って体育館へ向かう。
始業式は登校時に直接体育館へ向かい、式が終わってから各自の前年度から一つ上がった学年のクラスに行くことになっている。
つまり、学年は変わっても入学から卒業まで同じメンバーで過ごすのだ。
しかし、別に三人は式が楽しみで早く登校したわけではない。


「初仕事だからキンチョーするなぁ〜」
「シモンが緊張するなんて珍しいわね。私達がいるんだから大丈夫よ」
「そうだよね!」
「安心しろ。貴様が全てこなす訳ではない。問題はお前ではなく奴だ」
「ええ」
「奴って…?」

「「カミナ(よ・だ)」」

二人は何気なく目線を合わせて、間髪入れずに応えた。
躊躇う素振りさえ見せない爆弾発言にシモンは驚かずにはいられなかった。


「えぇ―!?だって、兄貴は仮にも生徒会長に選ばれる人間だよ!?」
「会長選挙は立候補制だ」


!?


「ぇ…でも、皆は兄貴になってほしかったんだよね!?」
「止めたけど、一度決めたら全く人の話聞かないのよ」


!!?


「…た、確かに;;(兄貴なら有り得る話だ)」




シモンは気付くだろうか。
そんな自由奔放な彼を支えようと、二人が選挙に立候補していたことを。









080509


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