学園集

□マジで殺す5秒前
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マジで殺す5秒前








「なぁ。ちょ―っとノート見せてくれよ?」
「断る」


夏休み明けて早2ヶ月が過ぎた麗らかなある日。

ヴィラルが図書室で勉強をしていると、同級生でありクラスメートであり中学から腐れ縁のカミナが話し掛けてきた。


「んなケチくせぇこと言うなよ!オレたち親友だろ?」


カミナはヴィラルの向かい側に座り、続いて野球で使用するバックをドカリと無遠慮にテーブルに乗せた。


「俺は貴様とそんなものになった覚えはないし、万が一なったとしてもそれは俺が頭を強打してイカレた時だ。っというか勝手に座るな!」


まるで当たり前のように自分と向かい合わせに陣取っている不躾な男に、ヴィラルはツッコまずにはいられなかった。
思わず握り拳をテーブルの中央に叩きつけた。
先程から小五月蝿い二人の言動に、周囲から冷たい視線に遭い浮いた存在になってしまった。
そのことに瞬時に気付いたヴィラルは周りに「すまない」と控えめな声で会釈し、カミナの部活バックの影に顔を潜めた。
一方のカミナはそんなことはお構いなしに喋り続ける。


「おいおい、6年間も同じクラスで親友じゃねぇってのはねぇーだろうがヴィラルちゃんよ―」
「静かにしろ!たまたま同じ学校、クラスになっただけで親友面か。ふっ、笑わせるな」


自分が何故こんな奴のせいで周りから冷ややかな目で見られなければならないのかと思うと堪らなく悔しくなった。
それでも、律儀にも小声で応えてやってしまっている己の性格にまったく涙が出てくる。


「素直じゃねぇな、お前」
「俺はいつも自分に忠実だ」


素直じゃない?そんなに自分の素直な対応がご希望なら、今すぐ目の前のサルの首根っこをひっ掴んで窓から放り投げてやるものだと、心の中で思いの丈をぶちまける。


「ま!そんなことはどうでもいいから、早くノート見せてくれよ!」
「っな!?だから」
「お前のノートって字ぃ綺麗だし見易くてすごくいいンだよ!だから見せろ!」
「ふん。煽ててもなn…ん?って、貴様にノートを貸したことなど一度も無いのに何だ、そのまるで以前見たことのあるような言い草は?」


なんの悪気も無い笑顔でサラッと言ったカミナの断定的な発言に、ヴィラルは驚きつい声を荒げてしまった。
再びの居たたまれない視線に再度謝罪しつつ、暫くは図書室の使用は避けるかなどと頭の隅で考えた。
勿論、向かい席でまるで他人事のように笑っている奴に殺意が芽生えたのは言うまでもない。





(貴様のお陰で生徒会に苦情が来そうだ)
(苦情だぁ?んなもん、オレ様に関係ねーよ!)
(言っておくが会長は貴様だ)
(…あ)


081007


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