短編集

□平行線上で進行中
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平行線上で進行中






光輝くネオンの中、恋人達の微笑み合う姿がなんとも心温まる。

そんな繁華街の通りには人でごった返していた。
右を見ても左を向いても人、人、人、また人であり、それもカップルばかり。

そんな甘い雰囲気の中で、やはり男一人でいるのは異色。


「(なんでこんなにカップルばかりうろちょろと。そもそも、奴のアパートで鍋(+チョコフォンデュ)をするだけでどうしてこんな目立つ場所で待ち合わせなくてはならないんだ?直接でいいだろ!…フッ。あぁ、まるで人がゴミのようだフハハハ。。)」


周りから好奇な目で観られているのではと被害妄想気味に加え、羞恥心と心細さからつい心の中で自暴自棄であった。

これが彼女待ちであるなら別に気にする必要なく堂々としていられるが、待ち人が男なら話は別。
まだかまだかと早く来てほしい気持ちとこのまま来ないでほしい気持ちで焦るばかり。

ヴィラルがもう帰ろうかと思ったその時、大通りの向こうが何やら騒がしいことに気が付いた。


「(何だ??)」


よく見ると、人々の流れを掻き分けて何かが激走してこちらに向かって来ていることが分かる。


「(いや、まさか…な?…いやいやいやいや、無いって。まさか絶対無いって!)」

「よお!待ったか?悪かったな遅れちまって。」


期待とは時として希望を大いに裏切るもの、ヴィラルはうなだれた。

その後、手短に遅刻の理由を聞かされたものの、自分はそんなことより一秒でも早くこの場から離れたいと思った。

だが、遅刻した当の本人は、途中で中学のダチに会ってつい立ち話しただとか待ち合わせ場所を1ブロック間違えただとか、終いにはキャッチのあまりのしつこさにぶん殴って走ってここまで来ただとか、……ん?


「殴って逃げてきたのか?」

「逃げてねぇ!アイツ等が追い掛けて来るんだ!」

「「「見つけたぞ、このクソ野郎!!!」」」

「!?」

「バレた!んっとに、しつけー奴等だな。オラ、走んぞヴィラル!」

「っち、どーして貴様はいつも「は!てめーらに捕まえられるカミナ様じゃねーよ!」

「挑発するな!!」


後ろをチラッと見ると、カミナの小学生レベルの挑発にまんまと乗せられたキャッチが先程よりも追い上げて来た。
それに負けじと俺の手を掴んだカミナも猛ダッシュする。

人目を憚ることなくいつもよりも賑わう大通りを掻き分けて走るのは正直うんざりした。

それでもフッと隣りを見やれば、心底楽しそうに笑いかけてくる奴の顔と掌から伝わる熱に頬が自然と緩むのが分かる。


俺達の特別な日は、きっともう暫くはこんな感じなのだろう。











フリー配布期間2/12〜2/24
現代パロ/バレンタインネタ/080212


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