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□土砂降りに濡れるラブソティー
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土砂降りに濡れるラブソティー







ザーザーザー

雨が一向に止まない今日この頃。
自然現象なのだから仕方のないことは分かりきっている。
こんな天気でも俺の頭の中は、気付けば今は傍にいないアイツで溢れている。
日頃からどんなに学校で構っても、不思議なことに居ない時にはどこかぽっかり穴が開いちまった気分になる。
アイツは今頃、一体何処で何をしてどんなことを考えているだろう?
そんなことを考えると何だか無償に笑えてくる。
それでも、もしかしたら自分のことを考えていたらと思うと、急に落ち着かなくて何かを誤魔化す様に必死で忘れようとする。
恵みのシャワーが始まってからというもの、ずっと、ずっと、頭から離れないのはアイツのこと。
俺の答えの見えない哀れな悩み。
こんな曇天の空を見上げた日には特にあぐねる。


「何してんだか。らしくねぇ…」


今すぐ逢いたい。
(逢いに行こう。)


忘れちまいたい、こんな憂鬱。
(何にも考えらんないくらい。)


アイツの瞳に俺の哀れな姿を写してやろう。
(俺だけを見させてやろう。)

嗚呼、何となくだが……

否、俺は鈍感だから今はまだこの気持ちに気付いちゃいない。
ずぶ濡れになった俺の姿を目の前にして、アイツはどう思うだろう?
呆れるか、嘲るか、馬鹿にするか、はたまた気味悪いと思うか…笑ってくれるか。
色々と不安に考えても、頭の隅ではきっと呆れた表情と優しい声で無造作にこちらにタオルを投げてくる姿を想像しちまうのは、俺がアイツに甘えている証拠なんだろな。
何だか可笑しなことに、雨が上がっちまうのが勿体無く思えてきた。
少しでも、
一秒でも早く隣りで体温を感じたい一心で、
てめぇの家まで押し駈けた俺は底無しにてめぇに惚れているみてーだ。





(よォ)
(…)
(返事ぐらいしろよ)
(っえ!な、なな何をしているんだ貴様!?こんな大雨の中!ずぶ濡れで!!)
(お〜お〜。おめぇはいつも威勢がイイn(つべこべ言わず家に入れ!話はそれからだ!)





090726


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