銀魂

□耳に残る君の
1ページ/1ページ

 
半年前、近藤さんがボロボロになった女を拾ってきた。身体中痣だらけであまりに酷い容姿だったもんだからその時は男か女かも判らなかったもんでさぁ。



「おい総悟、ガキんときの着物出して来てくれ」



あからさまに嫌そうな顔をしてたのか「ごつい男の服しかねぇんだ」と近藤さんが俺の頭を撫でた。





聞けば天人連中にボコられてたのを近藤さんが助けたらしい。
さらに意識を取り戻した女の身寄りがない事が判明し、新選組でひきとることになった。



(まったく人が良過ぎですぜぃ近藤さん)



俺は面倒臭いことに関わりたくなくて、遠まきに女を見るだけ。
山崎がお世話係り的存在になりつつあり、髪を結ってやったりしてたもんだから、着物はどーするのか聞いてみた、のが失敗だった。




「じゃあ、沖田さん買って来てくださいよ!見回りついでに!」



何が"じゃあ"なんだオイコラ山崎。


「俺洗濯物取り込まなきゃなんで!」


宜しくお願いしますとヘラヘラと笑う。
面倒事を押し付けられた腹いせに山崎の財布を奪ってやった。




適当にブラブラ歩いて、団子食って昼寝して、その後店頭においてある安い着物を買って帰る。







「ハイこれアンタの」


買ってきた着物を渡してやるとビックリした顔をしていて


「いつまでも俺のお下がり来てるわけにもいかねぇだろ」



気に入らねーなら怪我治ってから自分で買いなせぇ。

買って来た着物をじっと見つめてた女が顔を上げ「ありがとう」と笑った。





本当に嬉しそうにするもんだから、適当に選んでしまったことを少し後悔したりしなかったり。
それと同時に気付いた事がひとつ。




この時俺は初めて女の声を聞いたのだ。






(あいつの名前なんだっけ)



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ