Matter is Void.

□まぶたの裏に住まうひと
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「ふぁ〜…」


最近、ゴドリック・グリフィンドールは寝不足だった。


燃えるような金髪に艶はなく、琥珀色の瞳を瞼が何度か覆い隠す。
目の下にはうっすらとクマが出来ていた。


「ふぁっ…あ〜」


噛み殺しきれないあくびを連発するゴドリックの頭に、ドスッと重たい本が沈む。


「だあッ!!」


「気が緩みすぎだ。アホ」


「何しやがる、サラザール!」


「煩い。デカい声を出すな。」


長い黒髪のサラザール・スリザリンはその紅い瞳で冷ややかにゴドリックを見下ろす。


小さなたんこぶの出来た頭を摩りながら、ゴドリックは立ち上がり、サラザールに真剣な目を向ける。


「何だ?」


訝しげに眉を寄せるサラザールに、


「サラザール。泣いてるんだよ…」


「は?」


「毎晩夢の中で、銀髪の女の子が泣いてるんだよ…」


金色の大きな瞳から涙を流す少女。


震える細い肩を抱きしめてやりたいのに、手は空を掴むばかりで……。


そんな夢を毎夜視る。


「………。欲求不満か?」


娼館にでも行ってこい、とやはり冷ややかにサラザールは突き放す。


「相談くらい乗ってくれてもいいじゃねぇかよ…」


ぼやくゴドリックは、ふっと上を見やる。


生きた階段が、一定の時間を置いて動いている。


その間を縫って、何かが落ちてくる。
ような気がする。


「おい、ゴドリック。何をしている?」


「いや。何かが、落ちてくる…」


「は?」


ゴドリックの言葉にサラザールも上を見上げる。


すると、一片の雪のような光が、じれったくなる程ゆっくりと落ちてきた。


ゴドリックが手を差し出すと、光は大きくなり人の姿を象る。


光が霧散していくと、ゴドリックの腕の中には銀色の髪の少女がいた。





to be contined
06/10/16


title by夜風にまたがるニルバーナ

 

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