その他の夢
□真夜中の訪問者
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バイトのない日に限って、
「…なんでいるんですか」
「相変わらず色気ねぇなァ」
「いやなんでいるんですかって聞いてるんですけど」
「ああ?せっかく来てやった客に挨拶もねぇのか」
「明らかに不法侵入されてんですけどコレ話が噛み合ないんですけどコレ!!」
だからなんでいるんですか高杉さん!!!叫んだ先には、我が物顔でベットに腰掛けビールを煽る片目のテロリスト。(いっとくけどそれ私のビールだから!)
24時間営業のコンビニは地味な仕事の割に疲労感が多い。
今日も今日とてしっかりと真夜中まで自分のノルマを果たし、明日は久しぶりのオフだキャッホオオウ!と意気揚々と家に帰れば見知った顔の侵入者に右手を上げて『よう』と挨拶され、玄関先でたっぷり5秒は固まった。
テーブルの上には空になったビールの缶やらおにぎりの袋やらが空しく横たわっている。すなわち私の夜ご飯(おにぎりシャケ、ツナ、明太子)が死滅していた。
「…相変わらず自分勝手ですね…ていうかこの時間帯に仮にも女の部屋に無断侵入するのはどうかと…」
「はってめぇに拒否権なんかあるかよ」
「(嗚呼…なんで私あの時こんなジャイアン極まりない人間助けたんだろ…)」
もう何ヶ月も前のある日、バイト帰りに道ばたで血まみれになって倒れていたこの人を助けたのがそもそもの始まりだった。
あまりの出血の多さに半泣きで必死こいて家に運んでやったにも関わらず、次の日目を覚ました瞬間に刀を突きつけられた恐怖は今でも忘れない。
そして数日後、助けたのがあの過激派テロリスト高杉晋助だと知った時の衝撃も今でも忘れられないし、ましてや更に数日後夜中に突然何処からともなく家に侵入して来た高杉さんと酒を酌み交わした事実も多分一生忘れないと思う。(だって高杉さんが来る前から酔ってたんだもん!)
いつまでも玄関で固まってる訳にもいかず、渋々テーブルを挟んで高杉さんの前に座り込む。自分の家なのになんで私が畏まってるんだろ。
「…で、今日はなんでまたうちに?」
「此処らででっかい祭りがあるって聞いていてもたってもいられなくてなァ…。だからしばらく厄介になるぜ」
「そう言えばもうすぐお祭りみたいですけど……ってええ!!?」
し ば ら く 厄 介 に な る ! ?
いきなり飛び出したあり得ない単語に思わず耳を疑う。
厄介になる、というのは文字通り私の家に期間限定で転がり込むと!?
私のアホ面に満足したのか、にんまりと口の端をつり上げた高杉さんの顔は目に見えて凶悪面に拍車がかかっていた。
それにハッとして慌てて首を振るが、時すでに遅し。
「むっ無理に決まってるでしょう!?高杉さんなんかかくまってるのバレたら私までブタ箱行きじゃないですか!!」(ポイントはそこか?)
「テメェに拒否権はねぇってさっきも言っただろ」
「事の重大さが違います!!!第一お祭りまで何日あると思ってんですか!ただでさえうち経済状況苦しいのに!!」(だからそこか?)
「じゃあ、力づくで追い出してみろよ」
できるもんならな。
にんまりと笑った高杉さんに、心の中で絶叫。
(そんなこと出来ないってわかってるくせに言うんだからこのドSめ!)
終