その他の夢
□摂取量は計画的に
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「よう」
「うわ!」
客足の少なくなった平日の昼間、立ち読みばかりで一向にレジに来る気配のないお客さんを横目で見つつ棚の整理をしていた私の頭にぽんとのせられた大きな手。
ぶっきらぼうな声に振り向けば、くわえ煙草に若干瞳孔が開いているいつもの土方さんが立っていた。
「なんだ、土方さんかあ。こんにちは〜今日も瞳孔開いてますね」
「なんだとはなんだつか失礼にも程があんぞ」
「あだだだだだやめて下さい髪があああ!!!」
ぐっしゃぐっしゃに頭を撫でられ慌てて手を引きはがす。
「まったく…!…土方さんは……まあ聞くまでもないですけど」
「おいなんだその汚物を見るような目はマヨネーズなめんなコノヤロー」
「ていうか昨日も来ましたよねマヨネーズ買いに…内臓脂肪大丈夫なんですか」
「ハッ!それはこっちのせりごふぁ!!」
「だれが脂肪の塊ですかコルァ」
全国の乙女を敵に回すような発言をしそうになった土方さんの鳩尾に拳を叩き込む。
いい所に入ったのかうずくまり悶えている失礼な人は放っておくことにしてレジに戻ることにする。
「…ッんのやろォ…!もろに入ったぞテメェ…!」
「失礼な事言う土方さんが悪いんです。早くしてください、マヨネーズ買うんでしょう?」
私の言葉にまだお腹を押さえながらもしぶしぶマヨネーズをレジに持ってくる土方さん。
その手から商品を受け取りレジに通すピッという小気味いい音と共に、ふと思った。
「そういえば土方さん、マヨネーズ買うだけならこんなコンビニで買うよりちゃんとスーパーまで行った方が安いしいいのがありますよ?まあこっちとしては儲かるんでいいですけど」
「…近ぇからな」
「でも、普段は買い物ってちゃんと行く日とか行く人とか買う物が決まってるんでしょう?その時に多めに買えばいいのに…コンビニじゃ損しますよ」
「多めに買ってもなくなるもんはなくなんだよ」
「…それもそうですね。土方さんのマヨネーズ摂取量ってスーパーにある在庫の遥か上をいきそうだし」
「だからその汚物を見るような目をやめろ」
あはは〜と作り笑いで誤摩化し、はいありがとうございました、とお釣りとマヨネーズを渡す。
それに『おう』とだけ言って、ついでにまた私の髪をぐちゃぐちゃにかき回して(ぎゃー!!)土方さんは自動ドアに消えていった。
……土方さんがくると、必ず髪ぐちゃぐちゃになる……。
乱れたそれを手櫛でとかしながら、でもやっぱり私ならコンビニよりスーパーで買うなあ、と1人思ったのだった。
終(ツンデレな土方のはなし)