ゆめみどころ。
□落乱
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綾部の考えている事はよくわからない。
現に今も、穴の中から私を見上げる二つの瞳に悩まされていた。
「…なにか用なの?」
「別に用はない」
「…じゃあこの手はなに?」
「なんとなく」
なんとなくじゃねぇよコノヤロウ。
なぜか、全くもってなぜか、綾部は自分の掘った穴の中(タコツボだっけ)から手を伸ばし地面に立っている私の足首をがっちりと掴んでいる。
ただ穴を通り過ぎようとした私には本気で意味不明な綾部の行動だ。
掴まれた時なんかびっくりしすぎて裏返った悲鳴をあげるという失態までおかしてしまった。
それから10分。
綾部は未だ私の足首を掴んだままである。
「ねぇ綾部、そろそろ離してくれない?私直立不動にいい加減疲れてきたんだけど」
「おやまぁ」
「いや、おやまぁじゃなくて」
「あらまぁ」
「(馬鹿にしてんのか!)」
…わからない、本当にわからない。
彼は本当に一体なにをしたいんだろうか。
心なしか足首も感覚がなくなってきたような気がする…「強いて言えば」…綾部がいきなり喋った。
「私は、」
ぐ、と掴まれた足首に力が込められた。
綾部の眼が、あやしい輝きをまとって真っ直ぐに私の眼を射ぬく。
「きみとおちたいんだ」
お ち る
次の瞬間痛みと共に見えたのは土に囲まれたまあるい空だった。