CROWS

□髑髏達は数日遅れで愛を叫ぶ
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『『はあ〜ぁ』』



『…どうしたんだ?』


場所は武装の溜まり場、ブライアン
一番奥のテーブルを陣取るのは当然、ライダース姿の5代目武装の面々


集合してから数十分
その間にもう何度目かも分からない盛大な溜め息
いつになく重苦しい空気に耐えかねた好誠が口を開いた
が…


『『………はあ〜ぁ』』


暫くの沈黙の後に返ってきたのは先ほどと変わらぬ大きな溜め息



『『………』』


『…柳、何があったんだ?』


再び訪れた沈黙に好誠は仕方なく隣に座っている柳に訊いた


『…それがよ』
『なんだ?』
『…貰えなかったんだ』
『何を?』
『それは…』
『チョコだ、チョコ』



言いにくそうに言葉を濁す柳の代わりに稲田が答えた


『チョコ?…ああ、先週バレンタインだったな。…て、それでそんなに落ち込んでんのか?』
『当たり前だろ!どれだけ楽しみにしてたと思ってんだ!』


玄場が突然、大声で言った


『俺だってすっげぇ楽しみにしてたんだ!』
『俺なんか前の晩寝れなかったんだぞ!』


玄場に続き川地と甲斐も口を開いた


『そんなに楽しみにしてたのか。…けど、柳と信之助は毎年沢山もらってるじゃねーか?』
『そんな名前も知らねーような女にキョーミねぇんだよ』
『そうだ、俺達がチョコを貰いたい相手は1人だけだ』
『…1人?』


柳の言葉に良くない予感を覚えた好誠が眉を顰める


『決まってんだろ?』
『米崎だ、米崎!』


やっぱり…

信之助が大声で挙げた名前に好誠はガックリと肩を落とした


『あぁ!米崎からチョコ貰いたかったなあ!』
『俺も貰いたかった!』
『俺も!』
『あー!一回でいいから米崎みたいな美人からチョコ貰いてぇ!』
『俺は米崎から貰えるんなら何でもいい!てか、何でもいいから何か米崎から貰いたい!』
『俺、米崎からチョコ貰えるんなら死んでもいい!』
『俺だって!』


はぁ…


好誠はうんざりして溜め息を漏らしたが
既に米崎のコトしか頭になくなっている周りの連中の耳には届かなかった



『…お!!』
『んだよ?急にでけぇ声出すなよ』
『俺、すげぇいいコト思いついた!』
『何だよ、こんな時に…』
『逆バレンタインだ!逆バレンタイン!!』
『逆バレンタイン!?』
『そうか!俺らから渡せばいんだ!』
『そうだ!そうだ!』
『よし!今からチョコ買って米崎んトコ行くぞ!』
『『おお!』』
『え?おい!待てって…』


『『待ってろよ愛しの米崎!!』』


好誠が制止するように言ったが
そんな言葉などまるで耳に入ってない玄場達は大声で叫びながらバタバタと店から出て行った



『はあ…』


一人残された好誠は溜め息を吐くとポケットからケータイを取り出した


『もしもし?今、ドコだ?…そうか。今から迎えに行くから。…それが、ウチの連中がちょっと…、とにかく今から行くから。あと、チョコありがとな。じゃあ』


好誠は穏やかな笑顔を浮かべ携帯を切ると出口へと駆け出した


end.

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