WORST
□貴方のお気に入り
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『ぅわ!何すかっ?』
屋上でドラム缶に座り雑誌を読んでいると
隣のソファに座っていた米崎さんの手が突然伸びてきた
『また髪伸びたんじゃねーか?』
言いながら長めに伸ばした襟足を撫でられた
瞬間、心臓が跳ね上がる
『やめて下さいよ』
素気なく言うが
雑誌を持つ手は震えている
『いいよな、お前の髪。真っ直ぐでサラサラしてる』
自分の髪の方がいいじゃないっすか!
染めてんのに痛んでねぇしツヤツヤだし
今だって太陽の光に反射してキラキラしてるし
つか、擽ったいんすケド!?
そんなワケ絶対ねぇだろーけど、…誘ってんすか?
『……』
言いたいコトはたくさんあるが
今、声を出すと絶対どもったり裏返ったりしそうで黙り込む
代わりに精一杯の無関心を装い
雑誌を読むフリを続ける
米崎さんはそんな俺にお構いなしで髪を撫で続ける
『お!もう終りか』
暫くしてチャイムの音で米崎さんの手が止まる
『次は出ねぇとまじぃんだった。じゃあな』
そう言うと米崎さんはあっさり屋上を後にした
『はぁ…』
米崎さんの姿が見えなくなった途端
体から力が抜けてゆく