小さな魔王シリーズ
□小さな魔王と孤高の剣士<後編>
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魔王の部屋
先代「帰ってきてたけど……ホーティがいない」
魔神「失礼し…………」
先代「……や、やあ。久しぶり」
魔神「何故、ここに」
先代「いや、えーっとそう。あの人間の様子を見にだね」
魔神「……魔王様は、上手く飼い慣らしているようですが」
先代「へぇ。仲良いなら安心かな」
魔神「…………」
魔神「人間などを信頼し、お側に置かれる魔王様のお気持ちが、私には分かりません」
先代「そうは言うけど、君も知っているだろ。あの子は元々人間だ」
魔神「ですから、妙な情が移ってしまっては魔王様の障害になりかねません」
先代「ふうん……あの子の心配か」
魔神「…………」
魔神「貴方様も、魔王様も……人間との共存などという下らぬ理想を、なおも語るおつもりか」
先代「ああそうさ。それが僕らの理想だからね」
魔神「“貴方様の理想”の間違いでは……?」
先代「……」
ぎぃ……
魔王「おっと珍しいな、父上に魔神か」
魔神「こちらの資料をお持ちしました」
先代「……ただいま」
魔神「では、私はこれにて」
魔王「うむ。ご苦労さん」
魔王「険悪でしたが、どうしました?」
先代「なんだか僕、あいつに嫌われてるなー……」
魔王「当然でしょう。勝手に蒸発した挙句、帰って来たら何故かコブつきに。その後は譲位した余の側近になる等好き放題やったのは誰ですか」
先代「すみません生きててすみませんごめんなさい」
魔王「ま、構いませんよ。反面教師としては、父上以上の逸材はありませんからね」
先代「ははは……とりあえずありがと。ところでゲイン君とレイミアは?」
魔王「あの二人なら後で来ますよ」
先代「一緒に?あのレイミアが人間と行動を共にするとはねー……」
魔王「レイミアだけでなく、ほとんどの魔物はゲインに抵抗が無くなってきましたね。あいつは結構何も考えずに、魔物に接しますから」
先代「いいじゃないか。本当に、大きな一歩だよ」
魔王「……一人、快く思っていないのがいますけどね」
先代「魔神か……」
先代「昔から頭の堅い奴だったけど、最近特に苛立っているみたいだね。衝突したりしてない?」
魔王「いえ。少し素直じゃないだけで、可愛い奴ですよ」
先代「可愛い……かい?あれが」
魔王「子は問答無用で可愛いもんでしょう、お父さん」
先代「ああうん、確かにそうだ」