短編

□【小さな魔王と孤高の剣士】バレンタイン
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【小さな魔王と】
バレンタイン・デー番外編



魔王「うーむ……どうすべきか」

剣士「どうした、珍しく神妙な顔して」

魔王「いや、父上から後ろの山が届いてな」

剣士「…………何、これ」

魔王「色々なチョコを食べたいとぼやいたばかりにこれだ。何軒分か買い占めたらしい」



剣士「いくらお前でもこの量は無理だろ……」

魔王「ちょっとは減らしたのだが、このペースだと痛むだろうし。配るかと思っておったとこだ」

剣士「あ、俺に任せろ。撒いてくるわ」

魔王「ほぉ、ならば荷持ちを頼もうか。お前一人に任せると売りさばくだろうし」

剣士「…………ちっ」



魔王「さて、まずは目についた奴を手当たり次第に」

剣士「通り魔かよ」

魔王「気にするな。さあ、粛々と進むがいい!」

剣士「乗るんじゃねえ!チョコだけでもうだいぶ重いんだよ!あと、ただの台車をどう粛々と引けと?!」



魔王「お、ロォだ。おーい!」

狼男「……何の遊び?」

魔王「ふはは。崇高な目的のために進軍しておるよ!」

剣士「気にするな。とりあえずお前に渡すものがある」

魔王「あ、いやロォは」

狼男「後ろのそれ?悪いねー。オレ、チョコ駄目なんよ」



剣士「甘いもの苦手なのか?確かにお前は緑茶と煎餅が似合いそうだもんなあ」

狼男「この世界にそんなもんあるんかな……」

魔王「ロォはチョコを食うと中毒を起こすらしくてな。あんまり食べ過ぎると昏睡状態になるとか何とか……」

剣士「あ、あー……」

狼男「何やその同情の眼差し。しゃーないやろ、人間の格好しとるけど狼なんやから」



魔王「というわけで、ロォにも手伝ってもらって……」

剣士「だいぶ減ったな。もうお前が乗っても軽いわ」

狼男「いやー、皆食欲旺盛やねえ。そんなうまいんかね、チョコって」

魔王「旨いが、余はしばらく見たくないな」

剣士「俺もつまみ食いで結構食ったからな……」



剣士「で、後配ってないのは誰だ?」

魔王「二人だな。まずはレイミアの部屋に行くか」

剣士「そういえば今日はあいつ見てないな。何かあったのか?」

魔王「是非一日休ませて欲しいとな。珍しいこともあるものだ」

狼男「レイミアちゃん、部屋に篭って何やってんのかねー」



魔王「…………」

剣士「…………この匂いは」

狼男「オレ、鼻がいい分よく分かるんやけど…………解りとぉないなあ」



魔王「…………れ、レイミア。おるか?」

側近「あ、魔王様!ちょうど持って行くところだったんですよ!」



側近「じゃーん!腕によりをかけました!」

魔王「これは見事な」

剣士「チョコケーキ」

狼男「でかいね」

側近「チョコが食べたいとおっしゃってましたから!頑張りました!」



魔王「うん、旨そうだな。頂いてもいいか?」

側近「どうぞどうぞ。あんたたちも特別に食べていいわよ」

剣士「あ、ああ……」

狼男「オレは気持ちだけ貰っとくよ」

側近「じゃあお皿を用意して、お紅茶も淹れてきますね!」



魔王「……よし。お前たち、分かっておるな」

剣士「……食います」

狼男「魔物たちにチョコ配ったの口止めしときます」

魔王「余も先代に言い聞かせておくよ」

側近「はい!ごゆっくりどうぞ!」



魔神「それで」

魔王「…………残り、全部頼んだ」

魔神「全く……」

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