短編

□【魔王のおやど】縛りプレイなSS
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その日やって来た客達は、何だか変なテンションだった。


「女将さん!これ全部買い取りで!」
「うえええええ?!」

リーダーらしき男性は、ありったけの回復アイテムを積み上げてそう言い放った。
薬草や、飲めばすぐ元気満タンになる原材料不明の怪しい回復薬など。
トアはそれらを前にして、苦笑いを浮かべるしかない。
魔王城に挑もうという時に、何を考えてるんだろうこいつらは。そんな表情。

「え、えっと。装備のご購入に充てるのでしたら、お買い物オマケしますよ?」
「いやいや。違うんだよ女将さん」

リーダーは頭を振り、なんだか芝居がかった調子で続ける。

「俺達はろくに回復薬も使わず、楽々ここまで来れたんだ」
「は、はあ」
「つまり俺達マジ強い!」
「え?!!いやちょっと」

トアが悲壮な叫び声を上げるが、リーダーは聞く耳を持たない。

「こうなりゃ三柱も魔王も楽勝だろ!そうだろ皆!!」

振り返った先にいる仲間たちは、皆リーダーと同じような、過度に自信に溢れた表情で。


「じゃあ私も、回復魔法封じます!」

と、魔法使い。

「甘いな!俺は特技封じるぜ!」

と、リーダー(剣士)。

「では……私は皮の盾装備で行かせてもらおうか!」

と、騎士。


間違った方向に一致団結した彼らを、どう説得しようかと悩んでいる間に。

「つーわけで、世話になったな女将さん!俺らこのまま城に向かうわ!」
「行ってきます!」
「すぐに戻る。魔王を打ち倒してな!」


慌しく、彼らは宿を後にした。
買い取り金を受け取ることすら忘れるほど、元気一杯アドレナリン全開で。



一人残されたトアは、とりあえず彼らのことは放置することに決め、回復薬の査定作業に入った。

「確か今、魔物の健康診断が城で行われているから……道中手薄なんだよね」

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