小さな神様と灰色魔王

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ある世界には、神様がいらっしゃいました。
地と、水と、空の神様がいらっしゃいました。
全ての生き物に恵みと試練をお与え下さる、神様達がいらっしゃいました。


その三つの神様は、ある日こう考えました。
『私の居場所は余りに狭い』
『隣の居場所はとても広い』
『欲しい』
『欲しい』
『欲しい』
『奪えば良い』
考えて、しまったのでした。


神様達は争い始めました。
地に生きるもの、水に生きるもの、空に生きるもの。全てがその争いに巻き込まれ、多くの命が失われました。



神様「…………」



あらゆる生き物が、神様の争いを止めるため手を取り合いました。



神様「…………」



ですが、どんな武器魔法も神様には通じませんでした。
神様ですから、そんなことは当然でした。



神様「…………」



何も打つ手が無いかと思われ始めたある時、人間達がついに神様を止めることに成功します。
あらゆる生き物は、人間を讃えました。
犠牲となった沢山の命を弔いました。



神様「…………」



人間達は、どうやって神様達を鎮めたのか。
それは簡単なことでした。
この世界で神様に敵うものはいませんでした。
三つの神様が、最も偉い存在でした。



神様「…………」



だから人間は、神様達を従えるほどの力を持った、新たな神様を作ってしまったのでした。



神様「…………」



神様達は、新たな神様に従って争いを止めました。そして新たな神様をお連れして、どこかに消えてしまいました。
四つに増えた神様達は、今も私達をどこか遠くから、ずっと見守り続けて



魔王「おやおやこれは珍しい。作り物の神様なんて」

神様「え…………」



ある日、偽物神様の前に灰色の魔王が現れました。



魔王「しかも神様のくせに閉じ込められているとは。私が旅した世界の中で君ほど変な神様にはお目にかかった試しがありません」

神様「どうして……ここに、はいれたの?」

魔王「私は魔王。魔王に結界なんて通じません」

神様「まおう…………あなたは、こわい、ひと?」

魔王「さあ?」



魔王「良ければ君の名を?」

神様「く、くりみな」

魔王「そう私はシュライク。旅の魔王です。よろしくクリミナ」



小さな神様と、灰色魔王。
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