小さな魔王シリーズ
□小さな魔王と孤高の剣士・後日談
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トントン
側近「はーい。どちら様ですか?」
先代「やあ、久しぶりだね」
側近「せ……先代様?!」
側近「本当に、角をお渡ししたんですねえ……」
先代「ああ。だから三柱はちょっとお休みなんだ」
側近「あの方がお困りになりますよ?」
先代「大丈夫。ワイザーが代わりにやってくれるから」
側近「え……えええ?!」
魔王城
魔王「というわけだ。こいつを頼んだぞ」
??「他ならぬ姐さんの頼みですから。これから馬車馬のように働かせてあげますからね!我輩を崇め奉り好きに学べばいいですよ!」
息子「……母上」
魔王「言いたいことは分かるが、根はいい奴だから仲良くな」
先代「ホーティがね、見聞を広めてやりたいんだってさ」
側近「なるほど……魔王になるための勉強ですね」
先代「そんなとこかな。それより……あの、顔を見せて貰いたいな」
側近「あ……はい」
側近「今、ちょうど眠ったとこなんですよ」
先代「可愛いね。名前は確か……トアちゃん」
側近「はい。どこかの言葉で、『永遠』って意味だそうです」
先代「へえ……いい名前だね」
先代「この封印はレイミアが?」
側近「魔物の私と、魔王の力を持ったあいつの子ですから……凄い力を持っていまして」
先代「でも抑えきれていないね……よし」
側近「先代様……?」
先代「……これで、力は完全に封じられたよ。魔王でも気付かないくらいに」
側近「!あ、ありがとうございます!」
先代「いつか必要になれば僕が解いてあげるよ。どうせずっと側にいるんだし」
側近「……へ?」
先代「ホーティから聞いてない?僕もこの土地に住むことにしたんだ」
側近「……!まさか私達のためにですか?!すみません!」
先代「いいよいいよ。たまには家族の役に立たなきゃね!」
側近「先代様……」
先代「ああ、『先代様』はやめてくれ。これからは普通のご近所さんとして、よろしくね」
側近「はい!レイトさん!」
先代「そういえば彼は?」
側近「ああ……ゲインなら仕入れに」
剣士「ただいまー……て、先代さん」
先代「やあ」
剣士「へー……ご近所さんになるのか」
先代「ああ。店はうまくいってるかい?」
剣士「お陰さまで。金を返すには結構かかりそうだけど」
先代「別にいいって。前々からあげたって言っているじゃないか」
剣士「いやでも旅に出るからって貰ったのに……」
先代「あはは。じゃあホーティのとこで働いて返してくれればいいよ」
剣士「おう、労働払いか。それならトアに面倒かけないな」
側近「はいはい、いい子ねー。トア」
きゃっきゃっ
剣士「なあ、先代さん……俺はもうちょっとしたら、あっちに帰るんだ」
先代「ああ……」
剣士「完全な魔物に変わるまで、何年も眠ったままだ。その間……俺の代わりを頼みます」
先代「勿論だよ」
剣士「あと、俺は死んだことにします。どこかで生きてるなんて言ったら、逆に心配かけちまうから」
先代「……」
剣士「それともう一つ」
先代「何だい?」
剣士「……悪い虫がついたら、俺に代わって斬り捨ててください」
先代「うん、そうしたいのは山々だけどね。ちょっと落ち着いてくれるかな」