ポケモン金銀

□最終決戦編
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◇◇◇
「レッドさーん!」
オレはシロガネ山山頂で手を振った。リザードンと食事をしている影がこっちを向いた。
「…やあ、久しぶり。」
偶然シロガネ山でレッドさんと会って、約一年。たまに遊びに…兼鍛えに来るうちに、少しずつだが喋るようになっていた。
「最近来なかったね。」
「しばらくシンオウ行ってたんで。これ、おみやげです!」
レッドさんの手のひらに、袋を押しつける。彼は中を覗いて目を丸くした。
「…なんか…渋いものを買ってきたね。」
「シンオウって言ったら森のヨウカンでしょ!」
「は?…まあ良いか。それにしても、ちょうど良いところにきたね、ゴールド君。」
レッドさんはリュックに羊羹を突っ込んだ。
「久しぶりに下山しようと思ってたんだ。」
「帰るんですね!?」
「違う。」
「違うんかいっ!」
思わずつっこむ。軽く流された。
「ナナシマへ行く。知り合いから連絡が入って、ナナシマのポケモン預かりシステムが不調らしい。最近ロケット団らしき人影が目撃されているとも言うし。」
「し?」
「気になるからね。一緒に来るかい?」
「行きます!」
ポケギアを出す。母さんに連絡をして、シルバーを呼ぼうかとリストを回した。指が止まる。
(でも、危ない目にあったら…。)
シンオウから帰ってきて、まだ間もない。無理はさせたくない。
(…止めとこ。連絡したら、否が応でも来るし。)
ポケットにポケギアを突っ込む。
「じゃあ、行こうか。」

「ニシキさん。」
ここはナナシマ1の島。ポケモンセンターの戸を開けて、レッドさんが中に入っていった。
「レッドさん!来てくれたんですね!!」
「システムの不調なら、僕よりマサキ呼んだ方が早いんじゃないですか?」
「いえ、原因はわかってるんです。2の島の双子の島にあるアンテナに、ロケット団が入り込んでるんですよ!そこで電気タイプのポケモンを使ってるせいで、電波が乱れて乱れて…。」
「あぁ、なるほど。じゃあ、アンテナからロケット団を追い払えばいいですね。」
レッドさんの口元が笑った。
「それじゃ行こうか、ゴールド君。」

アンテナに続く階段を登る。すぐに黒い影を見つけた。
「いたね。」
「いましたね。」
電気タイプのポケモンがうじゃうじゃしている。黒い影はアンテナから部品を取り外そうとしていた。いくつかはすでに取り外されている。
 ハヤテをボールから出す。元気よく黒い影─ロケット団に突っ込んでいった。
「アンテナに気をつけながら、どろぼう!!」
「ギュルルッ!」
部品を奪う。レッドさんがいつの間にかピカチュウを出していて、そのピカチュウも散らばった部品を拾い集めていた。
「うわぁ!止めろ、お前ら!返せ!!」
「ハヤテナーイス♪」
奪った部品を鞄に入れる。帰ってからニシキさんに渡せばいいだろう。
「くそぅ!行け、マルマイン!!電撃を浴びせてやるんだ!」
「チェンジ!こうてつ、コメットパンチ!!」
ひょんなことからダイゴさんと交換したダンバル→メタグロスが軽ーくマルマインを吹っ飛ばした。落ちるマルマインをハヤテが受け止める。
「エーフィ!」
もう一匹がサイコキネシスの直撃を受ける。
「決めた!俺は逃げる!!こいつら強すぎ!!」
ロケット団はたむろしている電気ポケモン達を放っておいて、ヤミカラスにつかまって逃げていった。
「あ、逃げた!」
「ゴールド君、まずは1の島に戻ろう。アンテナを直さないと。」
「でも…」
「僕のエーフィの能力はなかなか強力だから、あれが逃げた先もすぐにわかる。このパーツをニシキさんに渡してから追いかければいい。」
「…そうですね。」
レッドさんが階段を下りていく。オレは去り際に、ロケット団が逃げていった方の空に向かって思いっきり舌を出した。


ニシキさんが工具とパーツを持って2の島に向かっていった。レッドさんは壁にもたれてそれを見ていたが、足元を歩き回っていたエーフィが動きを止めたのに気づくと立ち上がった。
「見つけたか?」
「フィィィ…。」
エーフィは彼の鞄からマップを引きずり出した。器用にめくってナナシマのページを開ける。前足で、たしっ!と5の島を押さえた。
「ここか…。」
エーフィは少し焦るようにレッドさんを引っ張る。
「急いだ方が良いか。」
エーフィはこっくりと頷いた。



◆◆◆
俺はそっと戸を開けた。埃が舞い上がり、げほげほと咳き込む。
「一ヶ月強でこんなに埃がたまるのか…。」
こまめに掃除しにきた方が良いかもしれない。服に付いた埃を払って、中に入った。
「親父は来てないみたいだな…。」
ポケットの中の手紙を取り出す。少し黄ばんだ紙に、丁寧な文字で「シルバーへ」と書かれていた。
「たまにはここに来るから、会えると良いな…って言っても…。」
俺は唇を尖らせた。
「そんな簡単に会えたら、苦労しないって。」
手紙をポケットに戻し、荷物をおろす。シンオウで買ってきたマフラーの包みを取り出した。
「…部屋に置いとけば良いか。」
靴についた泥を落として部屋に足を踏み入れた。ふ、と違和感に気づく。
(足跡が…。)
しゃがんでそれを観察した。自分のものよりは大きく、親父のものと同じくらいか、小さい。少なくとも四種類はある。行って、帰ってきたようだった。
(地元の子供が入り込んだわけじゃないな。)
ゆっくりと立ち上がると、俺はその足跡に沿って歩き始めた。
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