ポケモン金銀

□in海
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 「レン君……」
 「何ですか?」
 「泳がないの?」
 「はい。パッチーをひとりだけにして放っておいて、僕だけ遊ぶなんてできません!」
 「ぱち!」
 「あれは相当だね……」
 目を丸くするヒナタさんの向こうで、ダズルとカヅ君が苦笑した。

 フィオレ地方はサマランド。カムリさんからの招待で僕とダズルと二人で休みをもらい久々に遊びほうける……つもりだったのが、先のゴーゴー団事件の分の休暇代わりでヒナタさんとカヅ君が遊びに来ているのに出くわした。
 「パッチーちゃんならプラスルやマイナンと一緒に遊べるし……第一レン君暑そうだし……」
 「レン、泳げたよね?」
 「泳げるけど」
 「泳ぐの好きだったよね?」
 「別にそこまでは……助けてトワイライト」
 『お前、私に何を求めて……』
 「泳ぐ気がないのにバカンス来たの?」
 「うっ……」
 ザクリと図星を刺し貫かれた。

 実を言えば、泳ぎたくないわけではない。むしろ海底の探索でもしたいくらいだ。パッチーのことが気にかかるのは事実だが、しっかりした子だし、レンジャーベースに預けておけば安心安全。笑顔で送り出してくれるに違いない。ただ、人が多すぎたからこう困っているというわけだ。
 他人の中で水着になって──というのなら誰も僕のことなんて気にしないから問題ないが、見知った人の中でこの右肩をさらけ出すのは抵抗を感じる。傷痕をくっきりと残してあるのが自分の意志である以上、こんなことを言うのはわがままなんだろうけれど……。
 「…………」
 「おーい、レーン。聞いてるかー?」
 「…………あっ、何?」
 「とりあえずさ、明日は海を無しにしてジャングルの方に行かないかって話がでてるんだけど」
 「ジャングル?」
 「そうよ。奥にジャングルの遺跡って場所があって……あちこちに昔の文字みたいな模様が刻んであるの。ダズル君に聞いたんだけど、レン君興味あるんでしょ?」
 「古代文字!?」
 「おー、飛びついた飛びついた。じゃあ決まり」
 ダズルがチラッとこっちを見てウインクした。その意味を読み取って、僕は頭を下げたくなった。
 (さすがダズル……ちゃんと原因わかってる……)
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