Storia-短編集-

□人魚泳ぐ砂漠
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旅人は砂漠を歩いていました。
砂漠はどこまでも果てしなく続いていました。

しばらく歩くと、旅人は岩の上に、砂漠には似つかわしくない姿を見つけました。
それは人魚でした。
旅人は人魚に話しかけました。
「どうして人魚が砂漠にいるの?」
人魚が優しく微笑み、砂の中に飛び込みました。
そしてなんと気持ちよさそうに泳いでいるのです。
そして再び岩の上に腰掛け、驚いている旅人の腕を優しく掴みました。
「砂の中で泳ぐなんて、火傷してしまうよ。」
人魚は微笑み続けました。
旅人はふと、何かを思い出しました。
「そういえば、どうして僕はこんなところにいるのだろう。僕は戦場で仲間と戦っていたはずだったのに。」
旅人は砂漠を見回しました。
目を凝らすと、遠くに町が見えました。
「ああ…ここは僕の故郷に似ている…。」
旅人は人魚の瞳を見つめました。
人魚の瞳はただ果てしなく広がる砂の大海原を映していました。
その途端、旅人は全てを悟りました。
「ああ…そうか…僕はもう…」
人魚に誘われた旅人は砂の海で泳いでいました。
永遠に泳いでいました。

Fin.

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