Lunatic Orbit
□第9章
1ページ/5ページ
一行はできる限り足音を潜めて、階段を下りてゆく。
(どこまで続くんだろう)
ルナの持つ杖の先の宝珠の放つ光が薄く階段を照らしている。それを見ながら迅は拳を握りしめた。
「ルナ」
「──何?」
「首相のこと、やっぱりなんとか説得とかできな「迅」
ルナが長い髪を揺らした。鋭い声が迅の言葉を制する。
「『バカは死んでも治らない』って知ってる?」
「……」
「あの人は罪悪感なんてもう感じてないの」
「──ルナ……」
「大丈夫。迅は、絶対元の世界に送り返す。今は目の前のことに集中して──お願い」
ルナが足を止めた。丁度階段が終わり、暗い空間がそこにはあった。
「生きた人、気配、ない」
「そうか……この辺りに首相と依守はいないようだな」
「待ってください。“生きた人”の気配はない……って、どういうことなんです……」
シが何かにつまづき、言葉を詰まらせた。
「命がさまよってる人、いっぱい。死んでない。生きてない。強い力。大人、子供……」
「──!!」
おそるおそる振り返ったシが、抑えた悲鳴を上げた。
「人!?」
「能力者だわ。眠らされているみたいね」
「力、流れる!」
礼が奥の扉を指差した。
「首相と依守はあの中か!!」
「ねえ、何か、音がしない?」
ルナが顔をしかめた。微かだが、何かが起動したような、そんな音がした。
「きゃ!?」
またシが悲鳴を上げた。残り四人も息をのむ。
「これは──!?」
「──駄目!魂、器、戻る!出る、駄目!!」
淡い燐光を放ちながら能力者達の体から溢れ出た魂が、奥へと吸い寄せられてゆく。
「死んでしまう、本当……行く、駄目……!」
礼の瞳から涙がこぼれる。
「行きましょう!魂をあのバカに盗(ト)られる前に!」
◇