Lunatic Orbit

□第10章
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剣から鼓動が伝わる。
「ルナ…やったぞ…」
そのまま剣を薙ぎ払った。
化け物は苦しそうに呻きながら倒れ伏せた。
その瞬間、ルナが迅に抱き着いた。
「迅…っ!」
迅はルナを抱き返す。
オゼロは肩で息をしながら、安心したように壁にもたれ掛かった。
シは疲労によろめいたが、礼がすかさずシを支える。
「大丈夫か?」
「はい…!」
そのとき機械の後ろから依守が現れた。
「ふー…危なかったねー。僕がスイッチを切ってなかったらどうなっていたことか。君たちも、僕も。」
依守は変わり果てた首相に近づいた。
「まだかろうじて生きてるんだけど。トドメは?」
「待ってくれ…!」
迅はルナをきつく抱きしめた。
「うん、まあ放っておいても息絶えるだろうけどさ。」
依守は首相を見下ろした。

「迅…みんな…」
腕の中でルナが泣きながら呟く。
「ありがとう…」
いよいよルナとの別れの時が迫ってきている。
首相が事切れた時、その子孫であるルナの存在も消えるのだ。
「ルナさん…!私たちこそ…ありがとうです…」
シが涙をこぼしながら言った。
「ルナ、この時代、来てくれたお陰で、みんな生きる」
礼が一生懸命に言葉を紡いだ。
ルナは何度も頷いた。
「俺達は変えることができたんだな…この時代を、そして居場所を。」
オゼロは目を細めた。
「良かった…私…役目を果たせて…」
首相の身体が淡く輝きはじめた。魂が還ろうとしているのだろう。
「迅…忘れないで…私の存在が消えても…」
迅はルナの温もりを確かめるように強く抱きしめた。
「忘れない…絶対に…」
ルナが消えたとき、ルナの力でタイムスリップした迅も消えるだろう、もとの時代に。
迅は仲間の姿も目に焼き付けようとした。
「あ、首相が…」
依守が声を漏らした。
首相は魂と共に消え失せた。
「……!」
一同は来たる別れに身構えた。

だが

迅の腕の中の温もりは消えることはなかった。
「……え…どういうこと…」
ルナも驚いたように顔を上げた。
迅もうろたえた。
「何が起きたんだ?」
オゼロは目をしばたたかせて言った。
「いや、何も起きなかったな…。」

その瞬間、"チャリオット家の者だけが開けられる扉"が開いた。



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