Lunatic Orbit

□第1章
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――声がする

…俺を呼ぶ声が…――


「迅!」
迅と呼ばれた少年は、ハッと目を覚ます。
バスの座席にもたれ掛かり居眠りしていたようだった。

荒神 迅、見た目はちょい悪な高校生。
だが、彼には特別な力が備わっている…と、デパートの隅で営んでいるどこぞの占い師に言われ、近くにいた友人に大笑いされた苦い記憶がある。確かに人より運動神経がいいのはわかるが、それが特別な能力なのかといわれると自信がなくなる。
そんな彼は今修学旅行に来ていた。

「ヘブンランドに着いたぞ」
ヘブンランドとは大人気の遊園地で、ここのジェットコースターはスリル満点で一際人気がある。
「おっしゃああ!!ジェットコースター行くぞ!」
迅はバスから飛び降り、園内に向かって駆け出した。
「お、おい!楽しみは後の方に残しとこうぜ!」
迅に追いついた友人が息を切らしながら言った。
「あー、それもそうだな。」
迅は友人の背中をバンと叩き、また走り出した。


「さあっ!いよいよだ!」
「ヘブンランド名物、ジェットコースター!!」
「60分も並んだかいあって良かったぜ!」
迅含む元気いっぱい男子高校生は、ジェットコースターの座席に飛び込んだ。
「おい迅、キャストのお姉さんに笑われてんぞ」
「うっせぇ、お前が笑われてんだよ」
そんなふざけあいをしながらスタートを待つ、そのとき。

ざわ…

「?」
迅はなにかただならぬ予感を感じた。
(なんだ…?)

『スペースオブカオス発射5秒前――』

迅は、発射のアナウンスでハッと我に返った。
ただジェットコースターに緊張しているだけかもしれない。
そう思い、迅は息を吐いた。

『……3…2…1…GO!』


ガタガタガタガタ……

ジェットコースターが動き出した。
ひゅ〜と隣の友人が口笛を鳴らした。

ジェットコースターはゆっくりと蒼天へ昇っていく。

「迅、どうした?顔が引き攣ってるぞ」
隣の友人がにやにやしながら声をかけてきた…刹那。

ガラガラーーーッッ!!!!!!!

コースターが一気に降下した。
友人に気を取られていた迅は息ができなくなった。

「うぎゃああああああ!!!」

友人は絶叫していた。

ガーーーー!!!!!

「え、ちょ、これ怖――」

いくらなんでもこれは早過ぎだ。乗客は断末魔のような叫びをあげている。
何かアナウンスが聞こえたような気がした。


"故障"


制御不能になったジェットコースターは勢いが止まらず、2週目に突入した。
一気に駆け上がるとまた急降下した。
身体が宙に浮いた気がした。
身体が千切れるような気がした。
そんな感覚のままスピードはどんどん増していく。
迅は目をギュッとつむった。


(もうダメだ―――――)




そして視界が真っ白になった。


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