Lunatic Orbit

□第2章
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太陽は熟れすぎた果実のように真っ赤に燃えていた。心なしか迅のいた時代よりも大きくなっているような気がする。そしてあまり眩しくない。
迅とルナは、薄暗い空の下、ゴミの荒れ地を歩いていた。

「…で、ハーグダッツの独裁はどうやったら無くなるんだよ」
先程治してもらった手を握ったり閉じたりしながら、前を行くルナに話しかけた。
ルナはゆっくり振り返った。
「まずは奴隷のように働かされている人達の洗脳をとくのよ」
「えっ!?できるの?」
「洗脳は、怪音波によってされてしまうの。その怪音波は能力者には効かないけど一般人は、その音を聞くだけで洗脳をうけてしまう。怪音波装置は効能範囲が限られていて各地に点在してるわ。私たちはそれを壊しにいくのよ。壊してることは政府には内緒にしてね。バレたら壊してもまた装置を設置されて意味ないから。」
ルナは目を伏せた。
迅は、拳を握った。
「…わかった。頑張ろう!」
ルナは、泣きそうな顔で微笑んだ。
「ごめんなさい、ありがとう」
この娘は一人で闘っていたのだろうか…。

「で、今俺達どこ向かってんの?」
「えっ」
「……え?」
「え〜と……まずは集落を探してるのよ。」
「…ルナって結構アバウトなんだなあ――痛てっ」
迅はルナに叩かれた。
「何すんだよ」
「ふんっ」
ルナはぷりぷり怒って歩く速度を早めた。

迅はため息をついて辺りを見回した。集落なんて近くにあるのだろうか。ひたすらゴミと廃墟が広がるだけだ、と思った矢先。
「…あ、ルナ、見て。トロッコがあるよ。レールもひいてある。」
「どこ?」
あっち、と迅は指さした。
何かを運ぶためのトロッコだろうか。
「しめたわ!これに乗ったら集落に着くはずよ!」
「着くはずって…」
ルナはトロッコに向かって駆け出した。
そして華麗に飛び乗った。
「待って、どうやって操作するの?」
「勝手に動くわよ」
迅は先程襲い掛かってきた芝刈り機や掃除機のことを思い出した。
「危なくない?あいつらみたいに攻撃してきたら…」
「大丈夫。人に被害を与えぬよう処理してあるのよ。さあ、早く乗って」
迅は、ルナの後ろに乗り込んだ。
ブルルンとエンジンのような唸りを上げて、トロッコが震動し始めた。
「しっかりふちに捕まってなさいよ」
ガタガタガタガタ…
トロッコが、走り始めた。
迅はサッと血の気が引いた。
ガタガタガタガタガタガタガタガタ…

ガ――――――――ッッッ!!!
「なあああぁああぁああぁぁぁぁぁあああっ!!!!!」

トロッコが超特急で走り出した。
ジェットコースターより不安定だった。
左右に振られ、吐き気がした。

迅はもう一生絶叫マシーンには乗るまいと心に決めたのだった。


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