Lunatic Orbit

□第3章
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――枢密院。
「すみません、遅れましたー。」
源依攻が重い扉を開いた。
中には数人の政府の主要人物が集っていた。

依攻は決められた席についた。
「遅かったじゃないの。欠席者が増えるかと思ったわ。」
隣の女が口を尖らした。
机には『少佐』と書かれている。
「欠席者ぁ?」
女は囁いた。
「まず肝心の首相。何か用事があるらしいのよ。まあ代理の人が来てるから別にいいけど。」
議長が開始を告げ、順に地方の工場の様子を発表していった。2人はまたこそこそと話し始めた。
「…そういえば大佐もいないな。」
「ああ…大佐は、実験区域の様子を見に行ったわよ。なんでも怪音波が強すぎて洗脳民がゾンビみたいになってるらしいのよ。」
「ふん…実験体の無駄遣いじゃないか」
「怪音波の強さによって作業効率が変わるらしくて、頑張って探してるみたいだけど…」
「…僕たちには興味ないな。あ、そういえば少佐、君、昔能力者の男と付き合ってたらしいな」
「…!」
その時、ウォッホン。と咳ばらいが聞こえた。
依攻は議長を見た。
「中佐殿、少佐殿。会議中の私語は慎みなさい。代理の首相とはいえ、彼を敬うのが、臣の態度というものではないか?」
「ふん、私たち軍人は能力者や洗脳民をいたぶれたらいいのよ。」
「…付け上がるなよ、軍人め。…依攻殿、工場の様子を伝えたまえ。」
「ふぁーい」
欠伸半分で依攻が返事し、資料を持って立ち上がった。
「えーっと、キタノ製鉄所は正常に動作。タタラ製鉄所は洗脳民3人ほど死亡しましたが、今は正常。アルカナ製鉄は…」
依攻はふと、迅たちの顔が過ぎった。しかし、あれらは自分が細工したプレス機に倒されたはずだ。
「…正常です。」
一通り報告を終え、依攻は席についた。
ふと視線を見上げと、初めて国王がいることに気がついた。彼は虚ろな目をして、有らぬ方向を見ていた。
(ホント飾りの王だよな…)
依攻は苦笑した。


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