Lunatic Orbit

□第4章
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「シ、歳いくつだ?」
礼がシに尋ねた。シは礼をにらんだ後、低威力の風魔法を繰り出した。礼が吹き上げられる。
「うわ、礼!!」
「わわ、何!?」
「女の子の年齢はトップシークレットです!」
「でもシちゃんって大人っぽいもの。あの二人よりは落ち着いてるわ。」
「ルッ…ルナ!?」
礼が唸った。顔色が悪い。
「…13です。」
シがボソッと呟き、風が止む。礼は何とか着地した。
「えー!ピチピチじゃない!若ーい!!」
「礼ー。大丈夫かー?」
「…気持ち悪い。」
礼は水筒の水を飲んだ。少し顔色が良くなる。
「ルナ、これからどこに行くんだ?」
「うーん…。早くハーグダッツの独裁をやめさせたいけど、情報が少ないのよね。敵の情報も、敵地の情報も。」
「とにかくルト領の町から離れましょう。この先に少し小さな街があります。あそこなら休めますし、食料も買えます。問題はハーグダッツに少し近づいてしまうことですが…。」
「ん?」
シの表情が曇る。
「少し厳しい道のりになるかもしれませんが…行きましょう。」
迅たちは訳も分からず頷いた。

「もーっ!寒いっ!!」
ルナが冷蔵庫を殴った。礼は隣で電子レンジをボコボコにしている。シはスライム的ヘドロに向かって火炎魔法をぶちまけ、迅は扇風機と対峙していた。
「シ!」
「バーニング!!…何ですか、迅さん?」
「厳しい道のりになるかも…って、この事か!?」
「そうです!」
迅は剣を握りなおした。扇風機に叩き込む。
「このあたりはハーグダッツから攻撃できる距離なの!?」
ルナが叫ぶ。
「違います!ハーグダッツによって作られた兵器が、開発途中に捨てられたところです!!」
「不法投棄じゃん!!」
「その言葉はもう死語よ!無法地帯も同じなんだから!!」
「…何か出た。」
礼が動きを止めた。緊張した声が呟く。
「戦車ぁ!?」
「何あれ!こんな古いものが残ってるなんて!」
戦車はパンッと大砲を撃った。数メートル先の地面がえぐれる。
「危ねえっ!!」
シが魔法を詠唱した。空中に氷塊が出現する。
「フローズン!!」
キンッ!と辺りの空気が凍り付いた。戦車が動けなくなる。
「どうするんだ!?」
「コアになってるエネルギー源があるはずなんだけど…。」
礼が跳びあがる。戦車の戸を開けた。
「ここ、制御室?」
「運転席だ!」
迅も後に続いた。ルナが追おうとして、シを見た。さすがに裾の長いスカートであそこまで行くのは…
「…あれ?」
風に乗って、既に行っていた。

迅と礼は氷が溶けないうちにバキバキと装甲をはがし始めた。蹴り、叩き、割る。
「…エンジン発見!」
迅は剣を振りかぶった。勢いよく叩きつける。ようやく戦車は動きを止めた。
 「ふぇー…。」
 「終わった…。」
「…そろそろ廃棄所を抜けます。後少しです。」
シは遠くを見て言った。三人も同じように見つめる。小さく、ぼんやりと、だが確かに街が見えた。


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