Lunatic Orbit

□第7章
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「さいきん人減ったよね」
依守は、ソファに座ってのんびり寛いでいた。机の上にある砂糖菓子を手にとり口に放り込む。
「人の部屋で寛ぐなよ。」
大佐は恨めしそうに依守を睨んだ。
「たしかに少佐も中佐も出払っていて、城中は静かだが…。まあ国王が死んだから弔い中だしな。一応。」
ガリボリ砂糖菓子をかみ砕く音が響いた。
「ははあ…なるほどね。でもまさか死んでしまうとは。」
「?お前が毒殺したと聞いたが。」
依守は2つめの砂糖菓子をつまんだ。
「うん、毒を盛る前に、せっかくだから新薬の試験体になってもらおうとしたら、その薬で死んじゃったよ。」
「…おお怖い」
大佐は大袈裟に肩をすくめた。
「そういえば例の的(まと)はできたか?」
「今からやるつもり。なんせ皮膚強化とか耐熱とかの薬を作るのが大変だったんだから。」
「まさか国王に試した新薬って…」
依守はにやりと笑って、大佐を見、砂糖菓子を口にたくさん頬張り、部屋から出た。
俺の菓子食い過ぎだ、と後ろから何か聞こえた気がしたが、構わずガリガリかみ砕いた。


例の的――大佐は自分の愛用のバズーカ砲の練習の的に、人を使っている的のことだ。もちろん、弾が当たれば一たまりもないだろう。そこで、何人も的を集めるのが面倒な大佐は、依守に頑丈な的を作るよう命じた。
依守は檻の扉を開けた。
少女はビクリと怯えた。
「はじめましてー」
依守はいろいろな種類の薬品が入ったアタッシュケースを掲げた。
首にかけているネックレスが鈍く輝いた。
それを見て少女はさらに怯え、目を見開いた。
「そのネックレスは…」
「はい、腕出してー」
依守は強引に少女の痩せた腕を掴み、注射針を突き刺した。
少女は悲鳴を上げた。
「この薬は、皮膚を強化する薬。」
少女はガタガタ震え出す。
依守は休む間もなく次々と薬を投入する。
「これは、耐熱。これは、ええと、なんだっけ。」
少女は体を痙攣させて気絶した。
その間も容赦なく薬が打たれる。
ブクブクと皮膚が泡立ち、早くも薬の効果が現れた。
「まあー、これでいいか。」
依守はアタッシュケースを抱え、立ち去った。

数時間後、大佐は屋外でバズーカを構え、待っていた。
「はいはいコレです。」
依守は少女を連れてやってきた。少女は虚ろな目をしてバズーカを眺めていた。
「なんだ、一見すると普通の人間と変わらないじゃないか」
「とりあえず撃ってみてくださいよ」
依守は少女から離れた。
それを確認し、大佐はバズーカを撃ち放った。
轟音が轟き、少女は吹っ飛んだ。
2人は固唾を飲んで少女を見つめた。
しばらくして少女はよろよろと起き上がった。
「成功だな」
「成功ですね」
少女は訳もわからない仕打ちに涙した。助けて、と唇を動かす。そして短く呟いた。
「シ…」


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