式野物語

□第4章
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如月のキンとした冷たい風が吹き付ける。
式野神社はいつも通り賑わっていた。
「うー、寒いー」
いつもの悪霊退治を終えた月斗は冷えた刀身を鞘に納めた。空は鈍より曇っている。雪が降りそうだ。


社に戻る途中に咲を見かけた。萩も一緒だ。
咲は顔を赤らめながら萩に話し掛けていた。
(あいつら…へえー…。)
こっそり物陰から様子を見ることにした。
「萩はん…背中まだ痛む?」
「咲ちゃんは心配しなくていいんだよ。」
「でも萩はん…」
「何してるんですか、月斗さん」
不意に後ろから声をかけられ、飛び上がる。
「ききき祇里っ!?」
咲と萩も月斗の存在に気がつき、駆け寄ってくる。
「月斗さん…」
萩が呆れたように笑った。
月斗は申し訳なさそうに頭を下げた。
「月斗はん久しぶり!正月以来やね。」
「あ、ああ…」
「田上神社からようけ仕事が入ってきてなかなか来れやんだんさー」
「そうか、まあ良かったじゃないか、お金いっぱい稼げて。」
「まあ…ね」
咲は軽く微笑んだ。
「月斗さん、またお祓いの方がお見えですから早く行きましょう。」
祇里が月斗の袖を引っ張り、急かしてくる。
「ああ、悪い。じゃあまたな。」
月斗は軽く手をあげ、別れを告げた。
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