式野物語

□閑話
1ページ/4ページ


「あけましておめでとうございまーす!」
いつも朝起こしにくる女中が元気よく言って、鎧戸を開けた。
朝日が月斗の部屋に差し込んだ。
「う〜ん…むにゃむにゃ」
「式野神社特製おせち料理が待ってますよ」
「ああ…」
月斗は大きな欠伸をして起き上がった。
「あけましておめでとう。今年も宜しくお願いしますね。」
いつも毎朝起こしてくれる女中に新年の挨拶をする。
式野神社の新しい一年が始まったのだ。

朝食の間に祇里はいなかった。
「あれ、祇里は?」
萩は口に頬張っていたレンコンの煮物を一気に飲み込んだ。
「んぐ、ああ。祇里様なら朝早くから神社の行事にでかけました…僕も早く行かないと。」
萩はお茶を飲み干し慌ただしくでていった。
「俺はいいの?」
自分にも何か仕事があるのかもしれないと思い、近くの神官に尋ねた。
「今日は厄払いする行事ではないので大丈夫ですよ。参拝者と同じように月斗様もお祭りをお楽しみ下さいませ。境内には屋台なども並んでいますから。」
「そっか、ありがとう。」
月斗は雑炊をかきこんで、わくわくしながら身支度を整えに出た。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ