キリ番記念

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 足元で、砂がザクザクと音を立てている。
 「あっちぃ〜」
 迅は額の汗を拭った。ルナは魔術用の杖を支えに無言で歩いている。
 「何だよ、この暑さ」
 「仕方ないわよ」
 迅とは違い、ルナの息は全く乱れていない。この時代を生きてきたのだから、もう慣れているのだろう。
 「夜じゃ駄目なのか?涼しいだろ?」
 「夜中に襲われたら逃げられないじゃない」
 「朝方とか夕方とか」
 「砂漠越えに何日かけるつもり?もうここに入って三日も経ったのよ」
 ルナが振り返る。目がありありと「私は今、現在進行形で不機嫌です」と語っていた。
 「ぐだぐだ言ってないで歩きなさいよ」
 「うぇーい……」
 迅が嫌々返事をする。
 そのとき、二人の後ろでうなだれていた礼がハッと顔を上げた。
 「街!」
 「え?どこ?」
 「あっち。後少し!」
 礼の示す先には砂漠の陽炎が揺れていた。街らしきものは何も見えないが、礼ははちまきをたなびかせて歩き始めた。
 「早く行く!」
 「迅、グダグダしてると干物になるわよ!」
 ルナが迅に活を入れる。
 「街、水、ある。迅、頑張る!」
 礼がエサをぶら下げ迅を釣り、また三人は歩き出した。

 砂漠の陽炎が揺れている。

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