壱
□野良のお日様
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日も高い時刻。
辰馬は野原で寝そべっていた。
真っ青な空を眺めていると、どこからか猫の鳴き声。
それに一瞬気を取られたが、陽気にあてられ微睡みだした。
そんな中、額に何か柔らかいものが触れてきた。
「ん?何じゃ」
閉じかけた瞼を開き、頭をずらすと目の前に斑模様の猫の顔が広がった。
「さっき鳴いてた猫がか?」
それに応えるように、猫はにゃあと鳴いた。
猫は目の前にある毛玉の様な黒髪に興味を持ち、弄りだした。
「あだだだ。やめてくれんか、痛いぜよ」
爪で引っ掻くように髪を梳かれ、絡まった髪は引っ張られて辰馬は痛いと猫に訴えた。
「変なものに興味を持つのう」
自分の髪の毛を変なものと言う辰馬に、猫は愉快そうに鳴いた。
「あり、今笑ったがか?」
あはははー、と笑う辰馬に、この人間は自分の心を感じ取ったと猫は驚いた。
猫は辰馬の頭から離れると、今度は辰馬の腹の上に乗っかり丸まった。
「何じゃ、一緒に寝るがか」
応えるように猫は小さく鳴いた。既に眠くなってきたのだ。
「この陽気じゃからの。一緒に寝るぜよ」
猫は暖かい辰馬の上で、束の間の睡眠をとった。
完