□俺だけに
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「桂はお母さんみたいに心配してくれるから好き」

「銀時は適当なのにやる時はやるから好き」

「辰馬は明るくてあったかいから大好き」

いつも彼奴は皆にそう言う。

「高杉は、好きじゃない」

そして最後にこう言う。

俺には何もないと。

むかついたから、嫌がる彼奴を、無理矢理抱いた。

抱いた後、彼奴は俺に言った。




『あんたなんか大嫌い』




悔しくて、


お前はただの、戦場での疲れを取り除く拠り所なだけだと言ってやった。


「遊郭に行けばいいじゃない」

「金を使うのが勿体ない。丁度近くにお前が居たから。それだけだ」

「あんたなんか大嫌い」

「俺だって、嫌いだ」


大嫌いだ。

俺を嫌いだと言う、

お前が。




戦場に向かう。
天人を斬って、倒して。
仲間が斬られて、地に倒れて。

身も心も疲労した俺は、その身体で彼奴を抱く。

嫌いだ、嫌いだと言い合いながら、掻き抱く。

その繰り返し。




「わしの部屋に来んか」

「うん、いいよ」

彼奴は辰馬とも寝る。
恋だの愛だのそうゆう関係ではないらしい。

辰馬の事は大好きだから。

いいのだと言う。


「辰馬と何故寝る」

「私の勝手でしょ」

「心の拠り所として、お前を利用してるんだぞ」

「私も辰馬の明るさを拠り所にしてる」


あんたとの関係より、断然いいわと言った。


「あんたなんか大嫌い」

「俺だって、嫌いだ」

「ーーーーから、嫌い」

「あ?」

はじめて彼奴は、俺の嫌いな理由を言った。




「松陽先生の事しか頭にないから、嫌い」




彼奴は大きな瞳に涙を溜めて、俺を見据えて言った。

俺は、嗤う。

「そんな風にしか思えないお前が、嫌いだ」

彼奴は目を見開く。

「遊郭に行ったって意味無ェ。丁度近くに居たからじゃ無ェ」

彼奴は涙を零して。
そして笑う。

「やっぱり、あんたなんか、」














おまえの嘘を
俺だけにくれよ









「「大嫌い」」




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