BLEACH 長編
□08
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窓から見えるは代わり映えのない景色。
そんな中、紅い蝶は今日もやってきた。
「また来た…暇だね、お前も」
私が伸ばした指に乗る蝶。重みなんてちっとも感じないけれど、触れる感触はあるからちょっとだけくすぐったい。
「…今日は一人じゃないんだね」
誰かいる。
隠れる気が無いのか、気配がだだ漏れだし。
私が言ったらすぐに出てきた。
「…貴方は…」
「………」
前、私の前に現れた、あの死神。
泣きそうだった、あの男の人。
「誰なの…?」
どうして教えてくれないの?
私がそう言っても、彼は俯くだけ。
指に乗っていた蝶も彼の元へ。
あなたも彼の味方なの?
心で問うて、クスリと笑った。
「……て、ください…」
風が吹いたら消えそうな、小さな声だった。
初めて聞いた彼の声。
……初めて?
「待っていて、ください。必ず…我等がお助けします」
「待っていてください。必ずお迎えにあがります」
この声は誰?
記憶の中の貴方は一体…。
ああ、痛い。
(痛いのは頭?それとも心?)
いつの間にか彼は消えていて、いつもの景色。代わり映えの無い景色が残されていた。
(彼の涙が消えた日。そこには強い決意だけが残った)