BLEACH 長編
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「お兄ちゃん…」
村の外れ、人気の無い森の開けた場所に愛美はいた。
彼女の前には顔程の大きさの石が、少し盛り上がった土の上に置かれていて、それはまるで墓標のようだった。
ここは兄の墓標。
愛美の、流魂街での兄であった男の墓だった。
「お兄ちゃん…お兄ちゃんの妹の名前は…?」
「愛美でしょう?」そう言いたくてたまらなかった。
「妹がいるんだ」
ふとお兄ちゃんが漏らした言葉。
私の事を言っているのかと思ったけど、わざわざ私に言うことでもない。
誰のことだろう?
頭の中には疑問符がたくさんあった。
「現世にいたころにな。まだ俺が死ぬ前…俺には妹がいた」
私じゃない。
そう理解すると、幼い心ながらに嫉妬を覚えた。
優しくなくても素っ気なくても、私はお兄ちゃんが大好きだったから。
「周りからは、笑った顔がそっくりだって言われてて…その度に嬉しそうに笑うんだ」
誰か知らない女の子の話をするお兄ちゃんは、とても優しい顔で。
私は見たこと無い。こんな顔。
今は私のお兄ちゃんなのに、私じゃない妹の話なんてしないで。
「あいつは生きてるのかな…」
愛しそうに笑わないで。
その子に似てるって笑顔を私に向けないで。
私は…我が儘?