落第忍者
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ある日再び勝負が始まった。
「姫ー?」
部屋の中に、姫の姿が無かった。
どこか行ったのか?そう思い、部屋を出ようとしたが…止めた。
姿こそ見えないが、この部屋には誰かがいる。
敵かと疑ったが、隠す気のない気配から、忍者ではないことがうかがえた。
…ということは。
机の上には紙。紙には「もういいよ」の文字。
ああ、やはり。
これはかくれんぼ。
私に課せられた任務は、この部屋に隠れた姫を探すこと。
しかし、上手く隠れたもんだ。着物の端も見当たらない。
だが残念。忍者の私には娘一人探すことなど簡単だ。
僅かな息遣い、きぬ擦れの音やなんかで場所なんて特定できる。
静かな息遣い。
でも少し、呼吸しづらそうだ。
狭いところにいるのだろうか、身体を折りたたんでいるな。
僅かな衣擦れの音。ああ、これは木板と布が擦れる音。
ということはあの子は…。
「みぃつけた」
押入れの引き戸を引いた。
抱えられた足に埋められた顔が上げられ、驚いた目が揺れる黒髪から覗かれた。
「貴女の負けです、姫」
「…すごいわ三郎。今までの世話役達は誰一人見つけられなかったのに」
「上手いんですね、かくれんぼ」
「わざとよ。わざと私に勝たせてたの」
ああ、やはり敏い娘だ。
じじい共のヨイショを理解している。