ブリーチ 短編

□我が儘ベイビー
1ページ/2ページ

「お邪魔しまーす」

「適当に座ってろ。今飲み物持ってくるから」

「はーい」


座布団を出して部屋を出ていく一護。
それに座り、他人の部屋だっていうのにくつろいでいる私は彼の彼女。

今日は学校帰りに、珍しく一護から誘ってくれたので、彼の家に遊びに行くことにした。



帰りに誘ってくれるなんて本当に珍しい。
しかも直接。

普段は話し掛けもしてくれないくせに。
席替えで隣になった時だってよそよそしい。


学校での普段の一護を思い出してちょっとふて腐れていると、一護が帰ってきた。


「何むくれてんだよ」

「別にー…」

「ほら、麦茶で良かったか?」

「緑茶が良かった」

「…無ぇよ」

「嘘だよ」


おとなしく差し出された麦茶を飲んでいると、一護が隣に座る。

 

「で?何が気に入らないんだ?」

「なんでも無いってば」

「嘘つけ」


こんなに追求してくるのはきっと、自分のせいだって分かってるからだろう。


「…学校での一護を思い出してたの」

「学校での俺?」

「普段冷たいくせに、なんで今日誘ったのかなって思って」

「…普段の俺、そんなに冷たいか?」

「やだ…無自覚?…有り得ない」

「確かにちょっとは冷たいけど、言うほどじゃないだろ?」

「いーや、本当に冷たい」



一護から話し掛けるなんて挨拶しかないし。
お弁当一緒に食べようって言ったって「悪い」ばっかりで。
放課後一緒に帰るなんて以っての外。


「千鶴達に、本当に付き合ってたのか真面目に聞かれたんだよ?」

「わ、悪い…」

「謝れば済むと思ってるわけ?」

「それ以外どうすれってんだよ…」

「抱きしめてキスするとか、態度で示そうという考えが無いの?あーあ、どうしてこんな男と付き合ってたんだろ」

「おい、過去形にすんなよ!」

 
引き寄せられたと思うと、ギュッと抱きしめられた。


「…言われてからやられても…」

「別に言われたからとかじゃあ…」

「次は何?キスでもするの?」

「悪いかよ…」


見つめてきた一護に問うと、本当にしてきた。
今日は珍しいこと尽くし。雨でも降るんじゃないかと思うくらいに。


「言われたからとかじゃなくて、俺がしたいからするんだよ」

「私の気持ちは無視なわけ?」

「…俺のこと嫌いなのかよ」

「ん〜…?」


一瞬、一護の顔が強張った。ああ、焦ってる焦ってる…。


「好きじゃないって…言うとでも思った?」


そうして私の方からキスをした。少しだけ長いキス。


「学校でも優しくしてくれる?」

「それはちょっと…」

「どうして…」

「……学校でお前といると、水色や啓吾にからかわれるんだよ…」

「そんなの一護の問題でしょ。私には関係ない」

「おいおい…」





(我が儘ベイビー)


少しくらい許してよ?


 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ