ボカロ 短編
□歌を(レン)
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「マスター…?」
俺が呼んでも、彼女からの返事は無い。
「…マスター?」
リンが呼んでも、彼女は動かない。
「レン…マスター、死んじゃったの?」
病室には、もう機械的に鳴っていた電子音なんて聞こえない。
「…みたいだね」
マスターは病気だった。
1ヶ月くらい前から、もう長くはないと聞かされていた。
でも、マスターの死は唐突で。
さっきまで、微かにだが笑っていたマスターが、もう息さえしていない。
嗚呼、神様。
あんまりじゃないか。
「サヨナラ」を言う時間くらい頂戴。
リンなんて、突然すぎて涙も出てないよ。
普段は泣き虫のリンが。
俺達はマスターがいないと歌えない。
もっと歌いたかったよ。
君と。
君の歌を。
マスター、歌を教えて。
(君に捧ぐ歌を教えて)