その他 短編

□恋の味
1ページ/2ページ

「あ、銀さーん!」

「なんだ、お前か」



私が彼と出会ったのは、私が万事屋に依頼をしに行った時でした。




「なんだとは何よ」

「あの、上目遣い止めてもらえます?妹目線止めてもらえます?」



通された部屋の、大きな窓を背に座っている銀色の貴方に目を奪われました。

一目惚れというものです。





それからというもの、私はよく用もないのに万事屋へ遊びに行ったりしました。


神楽ちゃんと仲良くなれたのは思わぬ収穫でした。



「銀さんは散歩?一緒に行っていい?」

「いいけど、お前の奢りな」

「は?何それ。普通逆じゃない?」

「俺は女にも容赦しない主義なんだよ」



「オラ、行くぞ」と言われれば文句は言えない。


ちょっとゆっくり目な歩調で歩く貴方の横を並んで歩く。
おそらく、私に合わせてくれているのだろう。

ほら、こうしたさりげない優しさなんか見せるから。
私は貴方以外を見られなくなるの。



歩いてしばらくすると、銀さんの行きつけだという甘味処へ着いた。


「旦那、いらっしゃい。お、なんだ。旦那にもついにコレができたんですか」


甘味処の主人は小指を立てる。

好意を寄せる人と、そうなればいいなと思うのは、恋する乙女ならば必ず一度は思ってしまうもので。
周りから見たらそう見えるのかと思うと、ちょっと恥ずかしくなってしまった。



「馬鹿、違ぇよ」



でも、そう。
意識さえしていない銀さんからすればはた迷惑な話で。

分かってる。分かってるから、落ち込んでなんかいないもん。


それに、せっかく銀さんと一緒にいるんだから。
そんな事で落ち込んでなんかいられない。
 


「私、お団子にしようかな。銀さんは?」

「俺餡蜜」


人の金だからって高いもん頼みやがって。


 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ