ボカロ 短編
□涙(KAITO)
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「マスター…」
「ごめんね。カイトにこんな事話しても…困るよね」
違うんです。
違うんですよ、マスター。
俺は謝って欲しいんじゃないんです。
俺はマスターを抱きしめた。
「……カイト?」
「マスター…笑わないで下さい」
そんな顔で、笑わないで下さい。
「悲しいなら…笑わないでいいんです」
俺はその人の代わりになる事は出来ない。
それは分かってるんです。
でもマスター。
マスターがあの人の事を想っているように。
俺もマスターの事を想っているんです。
愛している女性がそんな顔して笑っている時に、俺は陳腐な言葉しか言えない。
だからせめて、貴女の代わりに泣かせて下さい。
「…泣き虫」
「違いますっ」
マスターは俺を抱き返して、背中を撫でてくれる。
「有難うね…カイト」
そう言って貴女は泣く。
「有難う…ごめんね」
(何度もそう、呟いて)