THE SHINE

□雪原
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−雪の中に身を置いたのは何百年ぶりだろう…−
軽い雪は静かに風と共にふわりと舞った。ぼんやりと空を見ながらユーリは一人、積もった雪の上に寝転んでいた。
空から自分に向かって降りそそぐ雪。目の前で手をかざすと、まるでそのまま空に昇って行くような感覚に陥る。
そういえば、遠い昔にも同じような事をした記憶がある…だいぶ幼かった気がする…そう…あれは…
静かに目を閉じた時である。
「あ〜っ!だめじゃないッスかぁ〜。こんな事して風邪引いたらどうするンスか!」
自分の事を、心配そうに見つめてる、見慣れた人物の顔がそこにはあった。
「大丈夫だ。私は風邪など引かぬ」
「そんなこと言って、この間も風邪引いてぶっ倒れたくせに…」
アッシュはユーリに歩み寄った。歩いたら、さくさくと雪を踏みつける微かな音。雪は滾々と降り続いている。
「なんでこんな事をしているんスか?」
アッシュは尋ねた。
「死の…疑似体験だ…」
ユーリは静かにそう答えた。どこか不安そうに自分を見つめるアッシュの顔が見えた。
アッシュは今にも泣き出しそうである。
「なんで…そんなこと…だって、オレ達…闇世界の者達にとって死はよっぽどのことが無い限り永遠に無縁…」
「だからだよ…」
アッシュが言い終わらないうちに口を開いた。
私たちにとって死とは無縁のことだ。いくら願ってもそれは絶対に叶わない・・・幼い頃からそれが不思議だった・・・何度も何度も願っていたのに・・・」
ーそう・・・小さい頃からずっと・・・ー
ユーリは再び目を閉じ、そして語りだした。
「あれは私がまだ幼かった時・・・私のことをかばって死んでしまった人間がいた。その人は私に『強くなれ』と言い残して・・・でも無理だった・・・頼れる人がその人だけだったから・・・私は泣き続けた。泣くのにも飽きた頃雪が降ってきた。人間は体温が低下したら死ぬ。じゃあ私は?死んだらまたあの人に会える。そう思って私は雪の中に身を置いた。でも・・・」
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