THE SHINE

□雫
1ページ/2ページ

─そういえば…
こんな風に頭を撫でて貰った事って
あんまり記憶にないな─

「ユーリ、起こしちゃったかい??」
ベッドの上…
情事の後のぼんやりしした時間…
ユーリはゆっくりと瞳を開けた。
「ん…スマ…」
「何処か痛む?」
ユーリは首を横に振る。
「そっか。よかった〜。結構無理させたから…」
スマイルはふわりとした笑みを浮かべ、そう言った。
「さぁ、も少し寝とくといいよ。疲れただろう?」
スマイルはユーリの頭を優しく撫でながら言った。

─そういえば…
スマイルも…─

「なぁスマイル…」
「ん?」
「スマイルは…誰かに…こんな風に頭を撫でられた事ってあるか?」
ユーリの突然な質問に、スマイルは暫し考えた。
「ん〜…母さんぐらい…かなぁ〜」
スマイルは答えた。
「…ユーリは、誰からも撫でられた事、なかったのかい?」
今度はスマイルからユーリに質問…
「あの人…位だった…。私は両親を知らない。あの人が唯一頼れる存在だったんだ…」
ユーリは小さくそう言った。
「あ…ユーリが小さい時は特に酷かったんだよね…」
今は様々な種族が暮らし、内乱も無いこの国だが…
かつては『悪魔狩り』が頻繁にあり…
スマイルもユーリも幼いながらに、独りで生きていくしかなかったのだ。
そう…
彼等は唯一生き残ってしまった『悪魔狩り』の被害者なのだ。
「あの人と会う前は虐待の日々で…あの人が殺されてからも…。あの人が…唯一の道標…だったのにっ…」
ユーリは、己でも気付かぬうちに、涙を幾つも幾つも流していた。
「辛かったね」
スマイルはそんなユーリをそっと抱き締めた。
「だから…だから……頭を撫でられると…すごく…落ち着くんだ…」
ユーリはそう語った。
「そう…。ボクでユーリが癒されるなら、いくらでもこうしてあげる…」
スマイルは、ユーリの頭をそっとそっと撫でた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ