THE SHINE

□雨の詩(うた)…
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雨になると思い出す。
あの人が言った言葉…───
「ユーリ、雨って嫌い?」

栗毛で長い髪…
彼女はそう尋ねてきた。

「うん…。だってお外に出られないから」

私はそう答えた。

「そうねぇ。でも、何か思わない?」

「ん??」

「雨の日って、晴れの日より、ゆっくり時間が流れているように──……




「…ん?」
目を開くと、何時もの部屋…
何時ものベッドの上だった。
雨が涙の痕の様に窓に当たって流れていた。
「雨…か…」
だからあの時の夢を見たのか…。
懐かしい夢…
とても温かくなる。
─コンコン─
部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「ユーリ、紅茶持ってきたッスよ」
ドアが開き、アッシュが入ってきた。
「呼んでくれれば…リビングまで出向いたのに」
私はアッシュに言った。
「いいんス。オレがユーリの部屋に来たかったから」
「…お前がそう言うと、どうも身構えてしまう…」
「わっ酷ぇ…」
そう言いながらアッシュは紅茶を入れる。
私はその様子をじっと見ていた。
「はいユーリ」
「ありがとう…」
紅茶を受け取り、それを口まで運ぶ。
レモンの良い薫りが鼻を突いた。
「レモングラスか…」
「そうッスよ。今日のケーキが少し甘めだから、紅茶は酸味のあるものを選んでみたッス」
アッシュも自分の分の紅茶を入れ、私の隣に座る。
「お前は雨の日って好きか?」
なんとなく尋ねた。
「そうッスねぇ…洗濯物は乾かねぇし、磁場が歪んで帰巣本能狂うしで…あんまり好きじゃないッス」
「ふふ…お前らしい意見だな」
あまりにもアッシュらしい答えが返ってきたから思わず笑ってしまった。
「なっ…笑わなくても良いじゃないッスか…」
「いや、すまんすまん…」
私はアッシュに軽く謝り、紅茶を啜った。
「でも、雨の日って晴れの日より時間がゆっくり流れてる様に感じるから、好きだったりするんスよねぇ…」
「ぇ…??」
ビックリした…。
あの人と…同じ事を言ったから…
「オレとしてはユーリとゆっくりと過ごす時間が幸せなんッス……って…ユーリ!!?」

温かい気持に…
懐かしい気持に満たされていく…
私の持っていたカップの中に雨が落ちる...
「オ…オレ、なんか悪いこと言っちゃったスか??」
アッシュが困っている…
早く…早くこの雨を止めないと…
止めないと…
そう思えば思うほど私から雨が落ちる。
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