THE SHINE

□1.2.3の魔法
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真夜中の静寂が辺りを包む。
ユーリはひたひたと、裸足で廊下を歩いていた。
向かう先は…

** ∞ ** ∞

「静かだねぇ…」
スマイルは、読んでいた医薬書を閉じ、呟きながら紅茶を啜った。
「スマイル…」
部屋のドアをノックする音と共に、ユーリの細く弱い声が聞こえた。
「入っておいで」
スマイルはユーリを部屋の中へと招き入れる。
ユーリはその背丈には似合わない、2回り程大きなパジャマを着ていて…
「スマ…」
ユーリはスマイルに抱きついた。
「どっ…どうしたの??」
「抱いて…。メチャクチャになる位…壊れても良いから…」
細く、弱く、震えた声…。
ユーリ自身も小刻に震えていた。
「ユーリ、それはユーリの本心じゃないね」
スマイルは、ユーリの頭をゆっくりと撫でた。
そしてベッドに座らせた。
「さぁ、何があったんだい??」
「眠れ…なかった…」
ユーリは少し俯いて言った。
「薬も…アッシュに取られたままんだ…」
更に付け足して言った。
スマイルは溜め息を吐き、呆れた様に…
「あのねぇ…それは、君が間違った飲み方をしたからだよ?アッシュね、本気で君の事、心配してたんだ」
と言った。
それに対しユーリは、すまなさそうな、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
暫く沈黙が続いた。
「ねぇユーリ、お薬使わなくても、眠れる方法、教えてあげよっか?」
スマイルはユーリの前にしゃがみ、ふわりと笑った。
「ある…のか??」
ユーリは恐る恐る尋ねた。
「うん、あるよ〜。試してみるかい??」
ユーリは頷いた。
「じゃあ、横になってごらん」
そっと頭を押し、ユーリをベッドに横にさせた。
「目を閉じて…深呼吸して…そぅ…ゆっくり3つ数えてごらん」
「いち…にぃ…さん…」
言われた通りユーリは数えた。
「目を開けてごらん。さぁ、どんな気分だい??」
「ぁ…」
ユーリは目を開けて、小さく声を上げた。
そして…
「痛い…何かわからない…けど…痛い…いたぃ…」
ユーリはぽろぽろと泣き出した。
「そぅ…それでいいんだよ。ちゃんと泣いてごらん」

** ∞ ** ∞

「ごめんねぇ…」
スマイルは、泣き疲れて眠ってしまったユーリの頭を己の膝の上に乗せ、撫でていた。
「ボクはアッシュみたいに、ユーリの異変にすぐ気付いてやれないねぇ…」
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