THE SHINE

□レクイエム〜遠い空に〜
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「ユーリって嫌いな物ってあるんスか??」
のんびりとしたティータイム…
オレは、なんとなく聞いた。
「そう…だなぁ…特にはないな」
ユーリはふわりと軽く笑ってそう言った。


それから…ユーリの様子がおかしかった…


§ § §

「君はユーリに何を聞いたんだい??」
夕食…ユーリは姿を見せず、部屋に篭りっぱなしで…
「別に…ユーリに嫌いなモンってあるのかなぁ〜って…聞いただけッス」
そう話した。
するとスマイルは片手で顔を覆い、深い溜め息をついた。
「君は聞いちゃいけない事をきいたねぇ…」
「ぇ??」
「アッシュはさ、ユーリが一番嫌いな事を知っているだろ??」

そうだ…ユーリが一番嫌いなもの…

「独り…ッスか」
「そ。でもね、もう一つ、嫌いなものがあるんだよ」
「何ッスか??」
オレは身を乗り出して尋ねた。
「人の寝顔だよ…」


§ § §

あれは…いつだったかな…。
そう…ボクとユーリが2人で歌いながら、色々な所を旅していた時だった…。


「お兄ちゃん!!」
ボク達は、ある資産家に呼ばれ、一週間位その家で歌っていた時があった。
そこで出会ったのが資産家の一人娘。
まだ幼い彼女はボク達を『兄』と慕っていた。
「マリアか??おいで」
「マリアちゃん、どうしたんだい??」
ボク達は、借りている部屋に彼女を招き入れた。
「あのね、眠れなかったの。だから、遊びに来たの」

この子は生まれつき身体が弱く、友達がいなかった。
だから、旅をしながら歌っていたボク達が珍しかったのだろう。

「では、貴女が眠れるように歌を紡ごう」
ボクはギターを取り出して、軽く音を出した。
目でユーリに合図を送り、ユーリが歌い出した。
ボクでも聞き惚れる位の優しい優しい歌…。

ユーリが歌い終わる頃には、彼女はぐっすり眠っていて…
ボクは彼女を部屋まで運んであげた。

そんな日が何日か続いたある日…

ボク達は、次の場所へ向かうため、準備をしていた時だった。

「娘が…娘が〜っ」
家の主人が、血相を変えてボク達の部屋に訪れた。
「どうしたんですか!?」
聞けば、彼女が危篤状態だと主人は言った。
「娘が…あんたらに会いたがっているんだよ」
主人は泣きながらボク達に言った。
ボク達は、彼女の部屋に走った。
彼女は微かに息をしているだけで…
「マリア…」
「マリアちゃん…」
ボクは彼女の手を握った。
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