THE SHINE

□蒼夜の出会い
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「待て貴様っ!!!」

人間界とメルヘン王国の境目の森…
今日の収録を終えて、家路に着いていたユーリの後ろから、そう声が聞こえた。

─パリン…─

その声に振り返ったユーリの足元で、何か、ガラスの様なものが割れ、青白い炎があがった。
「…かなり清められた聖水だな。このような物、今まで見た事がない」
ユーリはどこか楽しそうに笑い、聖水を投げてきた人物を見た。
金髪に、如何にもハンターを思わせる様な格好。その手には、しっかりと鞭が握られていた。
「エムが異世界からヴァンパイアハンターを連れて来たって言っていたが…。それがお前か」
ユーリはやっぱり楽しそうに笑い、そう問いかけた。
「そうやって笑っていられるのも今のうちだぞ。闇に繋がっているものは、どの世界だろうが全て絶つ!!!それが我がベルモンド家の宿命」
「……宿命か。それならば仕方の無い事だな。殺したいのなら殺せばいい……。私は殺されて当たり前の種族だ。どこの世界に行っても、忌み嫌われる存在なのだから」
「潔いなヴァンパイア」
「…死ぬ事に関しては何の抵抗もない。ただ…心残りがあると言えば、もう少し歌っていたかった…かな」
ユーリは寂しそうに笑い、ハンターを名乗る青年の前に立った。
「…止めた」
「ぇ??」
青年はそれまでの臨戦態勢を解いてそう言った。
「お前、どうしてそんな顔をする??今までにヴァンパイアやその配下にいる奴ら、全てオレは討ってきた。どいつもこいつも人間を嘲け笑い、あっさり殺すような奴らばっかりだった。なのにお前は今、悲しそうに笑った。何故だ??死ぬのはやはり怖いからか??」
「…さっきも言った。死ぬのは別に怖くないと」
「じゃあ、その心残りとやらか??」
「…一つはそれもある。しかし…一番はやはり…」
そう言うと、ユーリは内ポケットから十字架のペンダントを取り出し、愛おしそうに握りしめた。
「…人間が大好きなのだ。彼らは、私には無いものを沢山持っているから…。人間は、遠い昔に、私の一族を全て狩ったらしい。でも、一人生き残った私を助けてくれたのも、また人間だったのだよ」
「…お前は変わっている」
「よく言われるよ。吸血鬼らしくないと…。さて、そろそろ帰らねば、仲間に心配をかけてしまう」
ユーリは青年に笑いかけてから、翼を大きく広げた。
「…ベルモンドと言ったか。お前に、一つだけ頼みがある」
「……なんだ??」
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