THE SHINE

□Raison d'etre
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オレは、再びあの森の入り口付近にいた。
あのヴァンパイアと出会ったあの森に…
なんとなく会いたかった。
会って、もっと話をしてみたかった。
あの
悲しそうに笑んだ顔が忘れられなかったから…

「ユーリ…だったか。あのヴァンパイアの名前…」

ぼんやりとそう呟いて空を見上げた。
白い満月の側を、あのヴァンパイアが飛んでいたのが目に映った。
急いで後を追う。

森の中…
少し開けた所に湖があった。
彼は、丁度その真上…湖の中央に浮かんでいた。
「お……」
声をかけようとした時だった。

─バシャーン─

「!!!!!!!!!」
彼は突然、空中で翼をたたみ、湖に垂直に落ちた。
水飛沫と同時に、青白い炎も微かにあがる。
あの水、ただの水ではない。
魔を持つ者があれに触れれば…
ましてや自ら落ちるなど!!!
「何て奴だっ!!!」
湖に落ちた彼を救出に向かう。
水中に潜り、底に沈みゆく彼の腕をギリギリの所で掴んだ。

─ザバッ─

「はっ…っ…おい、大丈夫か!?」
「……………」
「くそっ!!!」
急いで岸まで連れて行き、湖から引き揚げる。
『軽っ…』
服が水を吸い込んでいる分、ある程度の重さを覚悟していたのだが…
服の重さしかないんじゃないかと思う位の軽さだった。
『ヴァンパイアはみんな軽いものなのか??』
それに、よく見ると綺麗だ。
今まで、ヴァンパイアをこんな間近で見た事なんてあっただろうか…。
あいつ等は、有無を言わさず襲ってきて…
大事な人を取り戻す為に戦って…
それは先祖代々やってきた事だ。
オレの世界では。
オレの子も孫も…更にはその後も、ヴァンパイアとの戦いは続いていくだろう。
この鞭と共に…
それでもこいつの世界では、闇の住人が疎外される事はないだろう。
人々に受け入れられ、普通に生活していく。
それは、ある意味で幸せな事かもしれない。

「ぅ……」
「大丈夫か??」
「…お前は…何時かの…」
「待ってろ今火を起こす。服、乾かした方がいいだろう。脱いで、これでも纏っていろ」
持っていた外套を渡した。
こんな綺麗な奴に、使い古しの汚い外套など似合わないと思ったが…
無いよりはマシだろう。
「…大丈夫だ。これ位、大した事じゃ…」
「ヴァンパイアが風邪を引くか知らないが、引いたら困るんじゃないか??歌、好きなんだろう??」
「…すまない…」
彼は暫く黙ってから小さくそう言った。
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