THE SHINE

□サクラ ノ イロ
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─夜の桜は何色と言えばいいのだろう…─

満月が真上まで来た頃、ユーリは、寝転んで満開の桜をぼんやりと眺めていた。
時折、緩やかに風が吹き、月光に照らされた花弁が、ユーリの上に、ひらひらと舞い落ちてくる。
「もぉ。そんなトコで寝てると、風邪ひきますよ??」
アッシュは、苦笑しながら、ユーリの元に歩み寄った。
「…地面が暖かいから大丈夫だ」
「ぅゎ…何ッスかその理由ι」
寝転んでいるユーリの隣に腰掛け、彼の髪の上に舞い落ちた花弁を手に取った。
「…と言うか、お前、夕食の片付けやら何やら終わったのか??」
「終わったから来たんですよ」
「だろうな。お前が中途半端で来ることなんて無いからな」
「ユーリがどうしても心配なら、全部投げ出してユーリのトコに来ますよ」
アッシュは木に寄りかかり、寝転んでいたユーリを抱き起こし、自分の上に座らせた。
「////」
ユーリは、アッシュの胸に顔を埋めた。
そんなユーリの頭をアッシュはそっと撫で、自分も満月に照らされた桜を見上げる。
「ライトアップされてない…月光だけの桜も綺麗ッスね」
「…なぁアッシュ」
「はい??」
「夜の桜は、一体何色って言えば良いんだろうな…」
「そうッスねぇ〜…」
再び風が吹き、花弁が宙を舞う。

月夜に照らされた青…
翻って深い蒼…
木の影に入り黒…
そして地面に落ち、ぼんやりと光る白…

昼間とは明らかに違う色の変化…
確かに、昼間の桜のように一つの色ではない。
でも、その色の変化といい、儚さといい、似ている気がする…
「ユーリ…とか言ったら怒ります??」
「……は??」
ユーリは呆気にとられた顔で、アッシュを見た。
「いや…だってッスよ??」

月夜に照らされて蒼く光る水銀色の髪
それを引き立てる白い肌も、月光を受けて綺麗な青で…
緋色の翼と瞳は赤を帯びた黒で…
白いシャツはぼんやりと光って見え、どこか儚い…

「ね??今のユーリと同じ色」
「……例えがお前らしいよ」
ユーリは肩で笑いながら、再びアッシュの胸に顔を埋めた。
「…それ、貶してるんスか?誉めてるんスか??」
「ふふふ…」
「もぉ。笑ってねぇで教えて下さいよ」
「思ってる方で良いよ」
「じゃあ、誉め言葉と取りますからね??」
そう言ってアッシュは、顔を埋めたままのユーリを起こし、唇にキスをした。
「オレにとっては、桜よりユーリの方が神秘的に見えるッスからね」
「本当に、お前らしいよ」
二人は月光を受けた桜を見上げた。
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