呪われた人々

□蒼月下の祈と願(†)
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─今日も、平穏な一日が過ごせた事を感謝致します…明日も、平穏な一日が過ごせる事を願って……アーメン…─

月明かりが差し込む真夜中の礼拝堂…。
この城で唯一神聖な場所で、リサは明日も平和に過ごせる様、神に祈りを捧げていた。
「母上…」
礼拝堂の扉が開いたと同時に、白金のサラサラした髪を揺らしながら、小さな子供が入ってきた。
「アルカード、どうしたの??こっちにいらっしゃい」
入ってきた我が子を手招きする。
「父上…忙しそうだったから…」
「それでここに来たのね」
小さく頷いたアルカードに、リサは微笑んだ。
「アルカード、少しお散歩に出かけましょう」
そう言って、彼女は立ち上がり、我が子の手を引き、歩き出した。




─城中庭…─
「今日は綺麗な満月ね〜。アルカード」
蒼く淡い光に包まれた中庭を、ゆっくりと歩くリサとアルカード。
「ねぇ母上…」
「なぁに??」
「なぜ、私には2つ名前があるの??」
アルカードは母の顔を見上げ聞いた。
「そうねぇ…一つは愛称ね」
「あいしょう???」
リサはしゃがんで小枝を拾い、地面にA.L.U.C.A.R.Dと書いた。
「これ、逆から読むと何て読める???」
「えっと…ド・ラ・キュ・ラ…父上の名前だ」
リサは微笑んで頷いた。
「これはね、あの人の願いが込められているのよ」
「願い???」
「そう…。あなたが産まれた時、私達が貴方に最初に贈ったのは『アドリアン』と言う名前だったわ。その時にね、あの人は『この子だけは、私と同じ道を辿ってしまわぬように…』と言ったの。だから、愛称として、貴方の父の名を逆から呼ぼうと決めたのよ」
「父上は、何か悪い事をしたの??」
アルカードはリサに尋ねた。
「私もよくは知らないわ。いいえ、寧ろ私達が知る必要無い。それは過去の事ですもの。でもあの人は…貴方の父はその事を後悔されている。だから貴方にだけは、間違った道を辿って欲しくないのよ」
リサは我が子の頭をそっと撫でた。
「アドリアン、アルカード、どちらも私達から貴方への贈り物。祈りと願い込めて…」
「そうなんだ…。私両方の名前を大切にするっ!!!」
アルカードは目を輝かせて言った。
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