7周年企画小説

□【虚像の世界】
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─触れては消える…
触れては消える…
私が求めたものは
全て全て消えてしまう…
これは夢??
これは現実??
私は…
どっちにいるの…??─

ゆっくりと目を醒ました。

久々の目覚め……

辺りを見回せば、何時だったか、バンドを組んでいた時代の物と思われる楽譜と、当時使用していた羽根ペンが、石造りの床上に転がっていた…。
「仲間…私の大事な…」
もういない仲間…
何故居なくなったのだろう…

「あぁ…そうだ……」

微かに記憶があった。

─ワタシガ…コロシタ…─

失う事が怖かった
ならば
消えてしまう前に、私が…この手で消してしまえばいい…

「そして…私も刺したんだ…」

純銀のナイフで…
己の身体を痛めつけた。
とどめにと、傷だらけの身体で、聖水を浴びた。

「なのに…私だけ…生きてるの??」

床に落ちていた楽譜を手にすると、まるで幻のように粉々になってしまった。

─ユーリ…─

崩れた楽譜から聞こえた声…
同時に、温かいものが身体を包む。

温かい…
温かい……
この温かさを
私は知っている……

「イタい…イタい…苦しい……」

私は、自分の身体を抱きしめて、そこにしゃがんだ。
涙が止まらない…

苦しすぎて
痛くて
目をキツく閉じた。

「ユーリ…ユーリ!!」
再びゆっくりと目を開くと、そこにはアッシュの顔があった。
「あ…しゅ…??」
何故??
どうして??
私は……確かに……
「私…アッシュ…殺したのに……??」
「何言ってるんスか…。ユーリ………」
アッシュは泣いていた。
何故泣いているんだろう…
「アッシュ…泣いてる…なん…で??」
「ユーリが………ユーリ、今度は……何しようとしたんだよっ……」

私…が??

確かに、全身が酷く気だるく、痛い。

自分の身体を傷付けて、聖水を浴びたのは事実……
アッシュを殺したのは幻……
石造りの床は本物…
黒くなり、崩れている楽譜も本物…


あれ……??
私は……どちらに存在しているんだろう…

「分からない…。アッシュ…どっちが夢??」

そう言ったら
今まで以上に、キツく抱きしめられた………。

END...






†後書き†

音楽お題その6。
お題にした曲は福 井 静の『鏡の中』でした。
うちのユーリにぴったりだなと…。

また暗いですね…。
今までUPしたのも、なんかこんな感じですよね…大半が…。

病んでます…。

でも、ユーリは、こうする事で『自分は存在している』というのを認識しているんだと思います。
アッシュがいくら言葉で言っても、確かなものがないと、不安で仕方ないのだと…
そう思ってます。うちの場合…。

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