THE SHINE

□雪原
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そう言い終わったと同時に閉じていた目を開いた。
少し強い風が未だ降り続けている雪を斜めに飛ばしながら去っていった。
アッシュは寝転んでいたユーリを優しく抱き起こした。
ユーリの身体は驚くほど冷え切っていた。
まるで死人の様に・・・
アッシュは思わずユーリを抱きしめた。
もともと彼の体温が誰よりも低いことはアッシュも知っている。でも、普段のユーリからは『生きている』という感覚がちゃんと伝わってくるのだ。
それなのに今の彼からはその『生きている』という感覚が伝わってこない。
「ユーリ・・・消えないで・・・」
さっきよりきつく抱きしめるアッシュに対し、いきなりそんな言葉をかけられ驚くユーリ。
「どうしたいきなり・・・。なぜ・・・私が消えるのだ?」
「だって・・・」
「さっきまで『死』を語っていたからか?」
ユーリを抱きしめながらこくりと頷いた。
「あと・・・ユーリの身体が雪みたいに・・・雪以上に冷たいから・・・いつかこの雪みたいに溶けて無くなるんじゃないかと・・・心配になって・・・だって・・・細雪みたいに繊細ですぐに溶けて無くなりやすそうだから・・・」
それを聞いたユーリは可笑しくてしかたなかった。
自分のことを心配して言ってくれてるのはよく分かる。しかし、細雪みたいだとは・・・
「もう!人が真面目に心配してるのに何笑ってるんスかっ!」
「いや・・・例えがな・・・まさか細雪みたいだと言われるとは思ってなかったからな・・・」
「あっ・・・いや・・・あの・・・あれはその・・・」
ゴニョゴニョと言いながらアッシュは顔を赤面させた。
「大丈夫だ。私は消えたりしないよ」
ユーリはアッシュにそう言った。
「ホントっスか?」
「あぁ・・・」
「絶対にオレの前からも消えないでくださいよっ!」
そう言ってアッシュは、ユーリにキスをした。
雪はいつの間にか止み雲の間から光りが差し込んでいた。
ーアッシュ・・・私の心が細雪なら、お前の心は雪原だ。
暖かく、そして白くて汚れの無い、広く清らかな雪原だ・・・ー

ーENDー
2003/01/01
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