THE SHINE

□PRAYER〜十字架の誓い〜
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アッシュはその声を辿り走り出した。
そして小高い丘の上…
声の主はとても気持ちよさそうに…
でも、とても悲しそうに唄を紡いでいた。
アッシュは立ち止まり、しばらくその歌を聴いていた。
まるで幻想世界にでもいるような…
「アッシュ??」
「えっ…あっ…はい??」
突然名前を呼ばれ、アッシュは幻想世界から現実へと引き戻された。
「…よく…ここが分かったな」
ユーリは静かにアッシュに聞いた。
「スマが丘だって言ったんで…」
「メルヘン王国には丘など沢山あるぞ??」
「ユーリの声が聞こえたんで…オレはそれを辿っただけッス」
アッシュはユーリに近付きながらそう言った。
「そういえば…お前には話てなかったな…」
ユーリは右に一歩ずれた。
ユーリの後ろには少し大きな十字架があった。
その下には沢山の花が添えてあった。
「これは…??」
アッシュは問う。
「墓だ…。200年前…私が幼かった頃…私の所為で死んでしまった者の…」
ユーリは十字架の前に跪いた。そして…
「あのね…彼は私が信頼を寄せている仲間の一人なんだ。それでね…〜〜〜」
今までに見せたことのない柔らかな表情で語る。

─ユーリ…こんな表情もするんだ…
分かってたハズなんだけどな…
オレに見せる表情が全てじゃないって…
分かってたハズなんだけどな…─

複雑な気持ちでアッシュはユーリを見ていた。
「眠りから覚めた時この場所は、あまりにも無残になっていた。木の十字架は朽ち果て、雑草は伸びで…。この十字架はバンドを始める少し前に建てた」
ユーリは立ち上がりながらそう言った。
「あの頃は幼くて、ちゃんと弔いも出来なかったからな」
「大切な人…だったんですね…」
先程ユーリが跪いたようにアッシュも十字架の前に跪き、手を合わせた。
「…ありがとう…」
ユーリが柔らかな口調でアッシュにそう言う。

秋の終わりらしくない暖かい風が吹いた。
まるで…まるで優しい人がそこに立っているような優しい暖かい風…

「さて…そろそろ帰るか。お前の事だ。食事を作ってから私を探しに来たのだろう??」
ユーリは翼を広げた。
「狽っ!!ずるいッスよ!飛ぶなんて…」
立ち上がり、叫ぶ。
「先に行ってるぞ」
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